労使トラブル110番
病気休職期間中に産休・育休は取れるのか?
Q
「抑うつ状態」という医師の診断に基づき病気休職中の職員がいます。
休職期間は6ヵ月で、この12月に休職期間満了となります。
その職員が、この度妊娠し、休職期間中に出産予定日とのことです。
休職期間中に産休、その後の育休を取ることができるのでしょうか?
A
休職期間中といえども産休・育休を取ることはできる
そもそも休職制度というものを根拠づける法律的規定は存在しておらず、あくまでも事業所が任意に就業規則等で制度を設けているものです。
本来解雇事由に該当する場合に、それをいきなり解雇するのではなく、会社に在籍させながら、治療等に専念させ、一定期間様子を見る期間として設けられたもので、一般に休職制度は解雇猶予措置と扱われています。
一方、産休及び育児休業というのは、それぞれ労働基準法、育児介護休業法によって定められたものです。
会社に在籍している以上、法が優先されますから、会社としては産休及び育休をとらせなければなりません。
行政通達でも、「産前休業の請求を行うためには就労していることが前提要件とならない」(昭和25.6.16基収1526号)としています。
つまり、休職期間中でも産前休業をとること(休職から産前休業に切り替え)は可能としています。
産休・育休と年休の違い
この点で間違いやすいのは年次有給休暇との違いです。
よく、「休職期間中に年次有給休暇を取れるのか?」という質問が出されますが、有給休暇とは労働義務のある日に労働を免除する日のことですから、そもそも休職によって労働義務が免除されている期間中に有給休暇を取得する余地はありません。
通達でも「労働義務のない日について年休を請求する余地はない」(昭和24.12.28基発1456号)とされており、産休・育休と年休との扱いは違います。
休職期間を延長しなければならないか?
では、産休中・育休中は休職期間を延長しなければならないのかというと、法律上そういう義務が課されているわけではありません。
休職期間満了時に、会社として、医師の診断書あるいは医師との面談などを通じて、復職可能かどうかを判断することになります。
まず以上の点が原則的な考え方となります。そこで、次に具体的なケースごとに考えてみます。
休職期間満了時に産休中の場合
まず休職期間満了時に産休中であった場合を考えてみます。
労働基準法第19条では、「産前産後の女性が第65条の規定によって休業する期間(産前6週間、産後8週間のこと)及びその後30日間は、解雇してはならない」と規定しています。
したがって、休職期間満了時が、産前産後休業期間とその後の30日間という解雇禁止期間に該当している場合は、退職させることはできません。
退職扱いとすることも解雇に準じる措置であるため、解雇と同様とみなされ制限されますので気を付けてください。
休職期間満了時に育休中であった場合
産休と違って育児休業中については法律上の解雇制限はありません。
たとえ育休中であっても、当初の休職期間が満了した時点で復職不可能であれば、解雇ないし退職の扱いとすることは適法です。
会社によっては、復職の判断に当たって医師の診断等をもとに判断するだけではなく、リハビリ勤務制度を設けて、その状況によって判断するという場合があります。
そうした場合、育休中はリハビリ勤務等も実施できませんから、復職可能かどうかを判定することは現実的に困難となると思われます。
その場合、休職期間を延長するなどして個別対応することを検討することとなるでしょう。
マタハラとならないよう細心の注意が必要
最近、最高裁のマタハラ判決を機に、法も改正され、行政においても厳しい判断が示される傾向にあります。
どのような場合にマタハラ、すなわち産休・育休等を理由とした不利益取扱いに該当し、どのような場合であれば、解雇・退職扱いしても不利益取扱いに該当しないのか、ということについてしっかりと整理しておくことが必要です。
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