時言

定年後再雇用者の賃金ダウンは違法~東京地裁判決の衝撃

定年後再雇用者は「定年時点と同じ仕事内容」のケースが最も多い。
ところが再雇用者の賃金水準は、平均で定年時の68.3%にとどまっている(労働政策研究・研修機構の調査)。
この実態に初めてメスが入れられた。

【賃金格差は違法と初判断】
定年後に再雇用されたトラック運転手3名が、定年前と同じ業務なのに賃金を下げられたのは違法だとして、横浜の運送会社に求めた訴訟で、5月13日、東京地裁は「業務の内容や責任が同じなのに、賃金を下げるのは、労働契約法(20条)に反する」と認定した。

労働契約法20条は、無期雇用で働く人と、有期雇用で働く人との間で、不合理な差別を禁じているものの、賃金格差について同条違反と認めた判決は初めて。
判決では「『特段の事情』がない限り、同じ業務内容にもかかわらず賃金格差を設けることは不合理」「(この会社について)再雇用時の賃下げで賃金コスト圧縮を必要とするような財務・経営状況ではなかった」としている。また、会社側の「運転手らは賃下げに同意していた」との主張に対しても、“同意しないと再雇用されない恐れがある状況だった”ことから、「特段の事情」に該当しないと判断した。

もちろん雇用確保のために再雇用者の賃金を下げること自体を否定しているわけではなく、業務が変わらないもとでコスト圧縮手段とすることを「正当化されない」としているのである。

【注目される日本郵便裁判】
現在進行中の同種の裁判は少なくないが、最も注目されているのが日本郵政裁判である。
待遇に不合理な差別があるとして、契約社員計12人が日本郵便を訴えている。
集配・集荷は非正規労働者と正社員が混在して作業しているが、2輪車で集配・集荷すると正社員には「外務業務手当」として1日1090円が支給されるが、期間雇用社員には何も支給されない。
祝日出勤すると、正社員には日給分の135%が上乗せされるが、期間雇用社員だと上乗せ額は35%に抑えられている。

日本郵便が抱える非正規労働者数は20万人。仮に労働契約法20条違反となれば、すべての非正規労働者と契約を結び直さざるを得ない。 1人1万円の待遇改善だと20億円、1人10万円だと200億円の人件費アップ要因になる。日本郵政の上場後の「懸念」材料だと指摘されている(東洋経済)。

【「同一労働同一賃金」関連3法改正】
一方、政府は、「同一労働同一賃金」を掲げ、労働契約法、パートタイム労働法、労働者派遣法の関連3法を一括改正する方向で閣議決定する方向。
労働契約法では、どんな場合に不合理な差別に当たるのかを分かりやすく規定する。
パートタイム労働法では、パートの差別禁止の対象範囲を広げる。派遣法では、派遣労働者と派遣先の労働者との不合理な格差を禁じる規定を設ける。
こうした方向の改正で、例えばパート労働者の賃金水準を、フルタイム労働者との対比で、現行の6割弱から欧州並みの7~9割に引き上げたいとしている。

企業も、従来の非正規雇用の労働条件や雇用のあり方について見直す時が来たようだ。


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