労使トラブル110番

メンタル不調による休職者は、管理職の地位を外してもいいか?

                       

Q
 副管理者という役職に任命した従業員が、「適応障害」、「6ヵ月の休職」という診断を受けました。「休職」させる際、「副管理者」の任務を解任してもよいのでしょうか。


A

【「不利益な取扱いの禁止」とならないか】


 ご質問の例と少し違うのですが、育児休業から復帰した従業員に対して、これまでより不利な労働条件で復帰させた場合、育児介護休業法における不利益な取扱いに該当するかどうかが問題となります。育児介護休業法10条によれば「事業主は、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益取扱いをしてはならない」と定め、不利益取扱いの例として「降格させること」も挙げています。
 裁判例では、広島中央保健生協事件(最高裁、平成26.10.23判決)が契機となって一連の通達等が出されました。ご質問の例は、育児介護休業法の問題ではないのですが、考え方として参考になると思います。


【検討が必要なこと】


 したがって、ご質問の例においていくつか検討すべき事項があると思います。

(1)第一に、「適応障害」となった経過と事由です。ご本人の個体的事由が「適応障害」となった原因であれば問題ないのですが、例えばパワハラその他事業所の側の原因が背景にあったとすると、単純に管理職の地位を外していいのか検討が必要でしょう。

(2)第二に、「副管理者」という役職を外すことにより、大きく賃金が減額となるかどうかです。つまり不利益の程度の問題です。

(3)第二のことと関連しますが、本人が同意しているかどうかです。従業員に適切に説明し、十分に理解を得て同意を得たのかどうかが問われます。仮に「同意」を得ていたとしてもそれが合理的な「同意」であったのかどうかが後々問われる可能性があります。


【説得力のある要件を満たす必要】


 先述の最高裁判決をきっかけに出された通達では、不利益変更とならない場合について以下の2つの指摘を行っています。

①「円滑な業務運営や人員の適正配置の確保などの業務上の必要性から支障があるため当該不利益取扱いを行わざるを得ない場合において」「…特段の事情が存在すると認められるとき」
又は
②「当該労働者が当該取扱いに同意している場合において」「…事業主から労働者に対して適切な説明がなされる等、一般的な労働者であれば当該取扱いについて同意するような合理的な理由が客観的に存在するとき」

 つまり、①客観的な事由として「特段の事情」がある場合と、②「一般的な労働者であれば」普通は同意するであろう「合理的な理由」がある場合が必要だという指摘です。

 以上の点を踏まえ、もう一度、チェックし直すことをお勧めします。


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