労使トラブル110番

宿日直の許可基準に合致しない実態があれば、未払い賃金とされるリスク

                       

Q
 医療機関です。看護師の宿直勤務について、監督署から是正勧告があり、労働実態が「断続的勤務とは認められず、未払い賃金を過去3年間分遡って支払え」とされました。これはやむを得ないのでしょうか?なお、変形労働時間制は採用しておりません。


A

【宿日直の許可基準】


 労規則23条は、「宿直又は日直の勤務で断続的な業務について…所轄労働基準監督署長の許可を受けた場合は、これに従事する労働者を、法32条の規定にかかわらず、使用することができる」と規定しています。「宿直又は日直の勤務で断続的な業務」とは、所定労働時間外又は休日における勤務であって、当該労働者の本来業務は処理せず、構内巡視、文書、電話の収受又は非常事態に備えて待機するもので常態としてほとんど労働する必要のない勤務のことをいいます。その許可基準として、通達は、次のように定めています。
①勤務の態様
 通常の労働の継続であるようなものは許可されず、常態としてほとんど労働する必要のない勤務に限り許可される(昭和22.9.13発基17号)。なお宿直又は日直の際に急患が運び込まれたりして、その労働者が本来の業務に従事することがあるが、その場合は、その時間は時間外労働又は休日労働として取り扱わなければならない。

②宿日直手当の額及び睡眠設備
 ・1回の宿直手当(深夜割増賃金を含む)又は1回の日直手当の最低額は、当該事業場において宿直又は日直につくことの予定されている同種の労働者に対して支払われている賃金の1人1日平均額の3分の1以上の額を下らないことが基準とされる。「1人1日平均の賃金額」は、労基法37条の割増賃金の基礎となる賃金により算定した賃金額が最低額とされる(昭和33.2.13基発90号)。
 ・宿直については相当の睡眠設備を条件として許可すること(昭和22.9.13発基17号)。

③宿直又は日直の回数
 原則として、日直については月1回を、宿直については週1回を超えてはならない(昭和23.4.17基収1077号)とされている。


【変形労働時間制で対応する場合も】


 もし仮に、勤務の態様が、「断続的業務に該当しない」などの実態があり、許可基準に合致していなければ、通常の勤務とみなされますから、支払っている宿日直手当では未払賃金の額に達しません。したがって、差額分を支払わなければなりません。
 そうすると勤務態様を「断続的労働」に合致したものに変更するか、それが不可能な場合は、変形労働時間制を採用するのも今後の対策として考える必要があります。例えば、1ヵ月変形を採用した場合、1ヵ月平均して週40時間の枠内であれば、宿直時間を通常の所定労働時間として設定することができますから、設定した時間までは時間外手当は発生しません(深夜割増賃金は発生しますが)。


【3年間遡って支払えとは】


 監督署が3年間遡って支払えとしているのは、2020年の労基法改正によります。それまでは2年で消滅時効となっていましたが、2020年の法改正で3年の消滅時効となりました。民法改正により消滅時効は5年で統一されたのですが、賃金の消滅時効は経過措置として当面3年となったのです。



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