労使トラブル110番
給与の支払方法と控除のルール
Q
現行の就業規則では、給与の支払方法として以下のように規定しています。
1 給与は、全額通貨で直接従業員に支払う。ただし、本人の申出により、銀行振込にて各自の指定する本人の預金口座に振り込むことができる。
2 前項にかかわらず、給与は、その支払いに際し以下のものを控除する。
①法令で定めるもの
②共済会費
③従業員と合意したもの
第2項は問題があるのではと言われているのですが、どうなのでしょうか。
A
【給与支払いの原則】
賃金の支払方法の5原則について、労働基準法第24条は次のように規定しています。
①通貨で
②直接労働者に
③全額を
④毎月1回以上
⑤一定の期日を定めて支払わなければならない。
(なお、直接払の原則では、使者に対して賃金を支払うことは差し支えないものとされています。昭和63年3月14日付基発第150号)
【賃金控除できる場合】
「全額払い」の原則の例外として、次の2つの場合を法令では認めています。一つは法令で定めたものです。具体的には、「源泉所得税」「住民税」「健康保険料及び厚生年金保険料の被保険者負担分」「雇用保険料の被保険者負担分」「介護保険料」です。
もう一つの例外は、労働基準法第24条により労使協定を締結して賃金控除できるものを定めた場合です。労使協定は言うまでもなく、過半数労組若しくは従業員の過半数を代表する者との協定のことです。なお、この労使協定は監督署への届出義務はありません。よくある労使協定による控除項目は、会社立替金(社内貸付金)の返済金、労働組合の組合費、共済会費などです。
そうすると法に基づく正しい給与の支払方法(賃金控除含め)の規定は次のようにならなければなりません。
1 給与は、全額通貨で直接従業員に支払う。ただし、本人の申出により、銀行振込にて各自の指定する本人の預金口座に振り込むことができる。
2 前項にかかわらず、給与は、その支払いに際し以下のものを控除する。
①法令で定めるもの(源泉所得税、住民税、健康保険料・厚生年金保険料、雇用保険料、介護保険料)
②従業員の過半数を代表する者との協定により定めたもの
・会社貸付金・会社立替金の返済分
・共済会費
・社宅家賃
・その他労使協定で定めたもの
以上から、貴社の規定は、労使協定方式をとっていないという問題があり、これは違法な規定です。労使協定を締結し、就業規則に添付するようにして下さい。