労使トラブル110番

勤務成績不良の者を即時解雇できるか?

                       

Q
 ある従業員が、業務命令に従おうとせず、自分勝手に仕事をするため、他の従業員からも苦情が多く出ています。こういう従業員をすぐ辞めさせたいのですが。



A

【普通解雇事由を定める規定】


 普通解雇は、労働契約の当初に約束した契約内容の債務不履行(履行不能または不完全履行)によって契約関係が継続できないため労働契約を終了させるものです。労働基準法89条3号で「退職に関する事項」は就業規則の絶対的必要記載事項とされており、普通解雇の事由については就業規則に記載する必要があります。例示すると次のような規定を置くということです。

 第○○条(普通解雇事由)
  従業員が次の各号の一つに該当するときは普通解雇する。
  ①身体または精神の障害等により業務に耐えられないと認められたとき。
  ②能力不足又は勤務成績不良で就業に適しないと認められたとき。
  ③勤務態度が不良で注意しても改善しないとき。
  ④協調性を欠き、他の従業員の業務遂行に悪影響を及ぼすとき。
  ⑤事業の縮小その他やむを得ない業務の都合によるとき。
  ⑥その他会社の従業員として適格性がないとき。

 ご相談のケースは、上記規定の②③④あたりに該当しているようです。(なお⑤はいわゆる「整理解雇」の規定として独立して規定してもよいです)



【解雇権濫用法理】


 上記のような規定を置いたとしても、この間の裁判で形成された解雇権濫用法理、つまり「権利の乱用として無効になる」という法理論が形成されています。「普通解雇事由がある場合においても、使用者は常に解雇しうるものではなく、当該具体的事情のもとにおいて、解雇に処することが著しく不合理であり、社会通念上相当なものとして是認することができないときには、当該解雇の意思表示は、解雇権の濫用として無効になる(最高裁昭和52.1.31高知放送事件)」。この判例法律は、労働基準法18条の2として(のちに労働契約法16条に移し替えられた)として法文化しています。



【解雇権濫用とみなされる場合とは】


 具体的に解雇権濫用とみなされる場合とはどういう場合でしょうか。

①規律違反行為があるか?
 規律違反行為とは、業務命令違反、職務専念義務違反(仕事中に私的な遊び等を行っている場合など)、信用保持義務違反があるかどうかなどで、その程度や回数、改善の余地の有無等が検討されます。
②職務を行う能力や適格性に欠けているかどうか?
 その会社の種類や規模、職務内容、労働者の採用理由、勤務成績、勤務態度の不良の程度とその回数、改善の余地があるか、会社の指導があったか、他の労働者との不均衡はないかなどが検証のポイントになります。

 なお、解雇予告手当の支給(あるいは1ヵ月前の予告)を行う必要があるかどうかですが、原則として支給しなければなりません。例外的に、懲戒事由に該当し、その責任が重い場合、労働基準監督署から解雇予告制度の適用除外の認定を受けた場合に、支給義務は免れます。



【具体的な対応は】


 以上の点を参考にして、次のような対応をしてください。

①まず事実を詳細に把握する。当該従業員の問題点を具体的に把握し、他の従業員からの聞き取りも詳細にやる必要があります。
②改善の機会を本人に与える。改善すべき点が明確になった場合、いきなり解雇するのではなく、改善の機会を与えることが大事です。「通知書」などの形で、1~3ヶ月ぐらいの猶予を与えて、「○○の点を改善すること」「○○をしないこと」「○○すること」などを具体的に指摘したものを通告し、それでもなお、改善されない場合に解雇を検討するということになります。

 上記のような対応を検討し、手立てを打たずに、解雇すると争いになったときには解雇無効となる可能性がありますので気を付けてください。




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