労使トラブル110番

採用時の健康情報の取得は制限されるのか?

                       

Q
 いままで職員採用にあたって、健康状態や既往歴などを面接で聞いてきました。最近、職員から「健康問題の質問は適切なのか」という疑問が出されています。どのように考えればいいでしょうか。



A

【採否の判断における調査行為の妥当性】


 使用者が身体疾患や精神障害があることを理由に採用を拒否することは、使用者の自由です。そのための調査行為について、最高裁(三菱樹脂事件)は次のように判断しています(昭和48年12月12日判決)。
 「憲法は、思想、信条の自由や法の下の平等を保障すると同時に、他方、22条、29条等において、財産権の行使、営業その他広く経済活動の自由をも基本的人権として保障している。それゆえ、企業は、かような経済活動の一環としてする契約締結の自由を有し、自己の営業のために労働者を雇用するにあたり、いかなる者を雇い入れるか、いかなる条件でこれを雇うかについて、法律その他による特別の制限がない限り、原則として自由にこれを決定することができるのであって、…。」なお、「法律その他による特別の制限」として、現在、雇用対策法(年齢を理由とする差別の禁止)、均等法(性別を理由とする差別の禁止)などがある。
 雇い入れ時に、採用手続きの一環として健康診断を行うことは、労働安全衛生法上行うべきであることはもちろん、採用後の労働者の健康管理の指針とする上での重要な資料ともなります。



【HIV、肝炎などの検査は実施できない】


 しかし、いくら調査の自由があるといっても、社会的差別につながりやすい肝炎やHIVなどの検査は実施すべきではありません。厚労省の指針(「雇用管理に関する個人情報の適正な取扱いを確保するために事業者が講ずべき措置に関する指針」平成17年3月)では、「HIV感染症やB型肝炎、C型肝炎等は、通常の業務において労働者が感染したり、感染した労働者が他の労働者に感染させたりすることは考えられず、また、これらの感染症に労働者が感染していること自体は、他の健康な労働者と異なる就業上の配慮は必要とするものではないことから、事業者は、業務上特に必要がある場合(看護師や調理師など)を除いて、これらの疾病に感染しているかどうかの情報を一律に取得するべきではない。また、色覚検査の結果等の遺伝情報についても、これにより事業者が就業上の配慮を行うべき特段の事情がある場合を除き、一律に取得するべきではない」としています。



【病歴の申告は重要】


 採否の判断に当たって病歴進行は必ず求めた方がいいでしょう。再発の可能性がある病気にかかっていた場合、今後の労務提供に大きな影響を与えかねないからです。労働安全衛生法も、定期健康診断で病歴(既往歴)を聞くことを認めているわけですから、前述の社会的差別につながる恐れのあるようなHIV感染症やB型・C型肝炎、色覚異常など以外はとくに問題はないと思います。



【面接以外でもやり方はいろいろある】


 採用面接でこれらの健康情報を聞く以外にも、健康診断を受診することや、病歴を記入する欄を設けた履歴書のひな型を作成、入社希望者に記入してもらうという方法もあります。やり方は実態に合ったものでいいと思います。


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