労使トラブル110番
日によって所定労働時間が違う場合、時間単位年休は1日何時間になる?
Q
週の3日は3時間勤務、1日は5時間勤務のアルバイトさんがいます。この場合の1日当たりの時間単位有休は3時間なのでしょうか、5時間なのでしょうか?また、時間単位有休の未消化分があった場合、翌年度に繰り越すことは可能ですか?
A
【時間単位年休の導入要件】
平成22年4月施行の改正労働基準法において、労使協定による時間単位の年次有給休暇制度が新設されました。労使協定で定めるべき事項は次のとおりです。
①時間単位有休を与える労働者の範囲
事業の正常な運営との調整を図る観点から、労使協定では時間単位年休を与える労働者の範囲を定めることとされています。例としては、ライン勤務者、変形勤務者、交替勤務者、短時間勤務者は対象外とすることができるとされています。ただし、利用目的によって範囲を制限することは認められません。
②時間単位年休の日数(5日以内)
もともとまとまった日数の休暇を取得するという年次有給休暇の本来の趣旨に鑑み、労働基準法は時間単位年休は5日以内としており、労使協定ではこの範囲(5日以下の日数)で日数を定める必要があります。
③時間単位年休の1日の時間数
1日当たり何時間の時間単位年休となるのか、所定労働時間をもとにその時間数を定めます(この点については次に詳しく述べます)。
④1時間単位以外を単位とする場合の時間数
これは2時間や3時間といった1時間以外の時間を単位として時間単位年休を与えるとする場合に、その時間数を定めるということです。ただし、30分など1時間未満時間数を単位として与えることはできません。厚労省のQ&Aでは「時間単位年休における取得の単位である時間とは、整数の時間数を指し、1時間に満たないものは含まれない」としています。例えば、30分の遅刻についても1時間単位で年休を充当しなければ適法な年休取得にはならないということです。
【時間単位年休の1日の時間数をめぐって】
上記③の1日当たり時間単位年休が何時間となるかという問題では、いくつかの問題があります。
まず所定労働時間数に1時間に満たない時間数がある場合、例えば1日7時間30分、週5日労働で1週37時間30分といった場合どうするかという問題です。労働基準基則第24条の4第1号において、1日の所定労働時間数を下回らないものとすると規定しています。上記例でいえば、「1日7時間30分」を「1日8時間」とする必要があるということです(週37時間30分を38時間とするのではありません)。
次に、日によって所定労働時間数が異なる場合の取扱いです。この場合、1年間における1日平均所定労働時間数を下回らないものとしなければなりません。1年間における総労働時間数が決まっていない場合には、決まっている期間における1日平均所定労働時間数となります。ご質問の例で言いますと、仮に「週3日×3時間+週1日5時間」が固定されているならば、14時間÷4日間=1日当たり3.5時間となりますから、それを下回らないものとするためには、1日当たり4時間の時間単位年休とすることになります。
【時間単位年休をめぐってよくある混乱】
<半日単位年休との関連>
もともと半日単位の年休は、原則として午前半日、午後半日(始業時刻から半日、終業時刻前の半日)という形での取得を意味します。これを拡大解釈して、労働時間の途中に半日(例えば4時間)、その前後に労働時間がある場合には半日単位年休とは言えません。これは時間単位年休を4時間とったという扱いになります。
労働基準法改正により法律上の扱いとなった時間単位年休と違い、半日年休は1日単位年休を前提とした制度として午前、午後それぞれ半日年休であれば認めてもかまわないというものです。
<次年度への繰り越しは認められるか>
1日単位の年休の未消化分については次年度に限り繰り越すことができます。では、時間単位年休と半日年休の繰り越しは認められるのでしょうか。
時間単位年休の繰り越しは認めてもいいという扱いにはなっていますが、問題は、仮に繰り越したとしても次年度についても時間単位年休取得の上限は年5日間(あるいは労使協定で定めた5日以内の日数)ですから、仮に5時間分次年度に繰り越したからといって、次年度は5.5日分の時間単位有休がとれるわけではありません。
半日単位については、もともと法律上の制度でないため繰越しそのものが認められていません。