労使トラブル110番
割増賃金の計算と規定の仕方
Q
弊社の割増賃金の規定は次のようになっています。
(時間外)〔基本給+手当(住宅手当・通勤手当を除く)〕÷1カ月平均労働時間×1.25
(深夜) 〃 ×1.5
(休日) 〃 ×1.35
(休日深夜) 〃 ×1.6
勤務形態が以前と比べて多様になってきて、深夜労働が時間外でない時間帯に行われる場合も生まれてきています。どのように規定すればいいのでしょうか。
A
【深夜労働が行われるパターン】
22時~5時までの時間帯に勤務した場合、深夜割増賃金を支払わなければなりません。最近どの企業も勤務形態が多様化していますから、深夜割増を支払わなければならないパターンも多様です。
①時間外労働が深夜時間帯に行われる場合
→時間外労働割増(1.25以上)+深夜割増(0.25以上)=1.5以上
②時間外労働が月60時間を超えていて、かつ深夜に及ぶ場合
→時間外労働割増(1.5以上)+深夜割増(0.25以上)=1.75以上
③時間外ではないが深夜時間帯に労働した場合
→通常の勤務(1.0)+深夜割増(0.25以上)=1.25以上
④休日労働で、深夜時間帯に労働した場合
→休日労働割増(1.35以上)+深夜割増(0.25以上)=1.6以上
そうすると、貴社の規定は①と④のパターンは規定していますが、②と③のパターンは規定されていません。もちろんすべてのパターンを規定してもよいでしょうが、複雑な規定となりますので、あくまでも深夜割増(0.25)のみを単純に規定した方がわかりやすいと思います。具体的には次のような規定です。
(深夜割増)〔基本給+手当(住宅手当・通勤手当を除く)〕÷1カ月平均労働時間×0.25
【時間外・休日・深夜労働が重なった場合の考え方】
では、法定休日に法定労働時間を超える労働をさせる場合、法定時間外・休日労働が深夜時間帯にわたって行われる場合の割増率はどう考えればいいのでしょうか。
ここで重要なのは、休日労働中に1日8時間を超える労働が行われた場合、休日労働については「時間外労働」という概念は存在しないということです。したがって、休日労働の割増率(35%以上)のみを用いるということです。
一方、時間外・休日労働に深夜労働が重なる場合は、時間外労働の割増率(25%以上または月60時間を超える場合は50%以上)、休日労働の割増率(35%以上)に深夜労働割増率(25%以上)を加えるので、それぞれ50%以上、75%以上、60%以上の割増率となるということです。表にすると次のようになります。
割増率
◎休日労働中に1日8時間を超える労働が行われた場合 ⇒ 35%以上
◎時間外労働+深夜労働 ⇒ 50%以上(25%+25%)
◎1ヵ月60時間を超える時間外労働+深夜労働 ⇒ 75%以上(50%+25%)
◎休日労働+深夜労働 ⇒ 60%以上(35%+25%)
なお、変形労働時間制を採用している場合の時間外労働の計算の仕方は、少し複雑になりますので、ご注意ください。