労使トラブル110番

賃金請求権の消滅時効が3年になったことに注意

                       

Q
 この10月からの最低賃金引き上げに伴いパート職員の時給も引き上げました。その際、過去の時給額が最低賃金を下回っていたことが発覚しました。これは2年遡って支払わなければなりませんか?



A

【最低賃金法は強行法規】


 法律には強行法規と任意法規があります。強行法規とは、たとえ法律と違う特約を契約書で定めたり、就業規則等で定めたとしても、法律に反する定めはすべて無効であり、法律の定めに従わなければならないというものです。
 最低賃金法は強行法規で、いくら最低賃金に違反する雇用契約書を締結しても、その部分は無効となり、最低賃金法の定めに基づく賃金を支払わなければなりません。他に、労働基準法も強行法規です。労働基準法は、最低限の労働基準を定めた法律ですから、それを下回る条件を雇用契約書・就業規則で定めてもその部分は無効となります。
 東京都は、2023年10月1日以降の時給額を最低1,113円とすることを、最低賃金審議会は決定し発表しています。パート職員等の時給額はもちろん、正職員の時給換算額もすべて、最低賃金を上回る額でなければなりません。


【賃金請求権の消滅時効】


 労働基準法では、長く賃金請求権の消滅時効は3年と定められてきました。民法が改正され(2020年4月施行)、債権の消滅時効は一律5年と定められました。いままで短期消滅債権などバラバラな規定だったものを統一したということです。
 賃金債権も当初5年で統一される予定でしたが、労働基準法の改正の過程で労働者側と使用者側との意見の対立が激しく、結局的妥協的に「当面3年」という規定にすることとなりました。「当面3年」がいつまでなのかは決まっておらず、ずうっと3年の可能性もありますし、他と同じように5年時効で統一される可能性もあります。
 法改正は、2020年4月1日ですから、2020年4月以降に発生した賃金債権が対象になります。過去3年間遡って、2020年4月以降に未払い賃金があるならばそれは支払わなければならないということです。


【3年よりも前の賃金債権は?】


 では3年時効より前に未払い賃金があった場合はどうするのでしょうか。時効の援用(「時効の援用」とは、すでに時効になっていますので、それ以前の賃金未払いについては支払いませんという意思表示をすることです)をすることによって解決することになるでしょう。時効の援用をしなければいつまでも未払い賃金があることになります。


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