労使トラブル110番
代休は使用者が指定するのか、労働者が請求するのか
Q
弊社の就業規則では、「休日労働させた場合は、1ヵ月以内に代休を付与する」と定めていますが、実際の運用では、労働者が請求した日を代休とする例が多く、また、代休指定日に有給休暇を請求するような例もあり混乱しています。代休における使用者の指定権と労働者の請求権との関係がよくわかりません。
A
【振替と代休の違い】
振替と代休の違いがあいまいにされている例が多々ありますが、この2つは法律上明確に異なっています。振替は、予め休日と他の特定の労働日とを振り替える措置を取ることですが、代休は、このような措置を事前に取っておくことなしに、実際に休日労働させてから、その後で休日労働の代償として他の労働日を休日として休ませることをいいます。
この違いは、休日労働が発生しているのかどうかの違いとして現れます。振替は、休日を他の日に振り替えることですから、振り替えられた日が休日となります。一方、代休は、休日労働が発生した後に別の日を休日とするものですから、現実に休日労働は発生しており、したがって休日割増(1.35以上)を支払わなければなりません。
【就業規則等の定めにより代休が発生する】
代休制度は法律上認められているものではありません。昭和23年4.9基収1004号通達は、休日労働について「使用者に代休を与える法律上の義務はない」としています。多くの会社で代休制度があるのは、その会社の就業規則等で定めがあるためです。就業規則等での定めがあって初めて代休を付与する義務あるいは付与を求める権利が発生するのです。
では、代休の付与は、使用者が一方的に指定するものなのでしょうか、それとも労働者が請求するものなのでしょうか。それも就業規則等の定めで決めるべき問題です。
【代休指定権と代休請求権】
まず使用者が一方的に代休を指定する(代休指定権)ことはどうなのでしょうか。代休は、休日労働の代償として、所定労働日の労働義務を免除して休みを与えるものですから、いわゆる指定休日と同じ性質のものです。したがって、使用者が一方的に休日を指定することは可能です。
では、労働者は、自分の希望する日に代休を請求する権利はあるのでしょうか。就業規則等で「原則として労働者が希望する日に代休を与える」と規定していれば、労働者に請求権があることになります。但し、労働者の一方的指定のみで代休が成立するわけではありません。年次有給休暇の場合は、原則的に労働者に指定権があります(もちろん使用者には時季変更権がある)が、代休の場合は、あくまでも使用者による許可・承認があってはじめて代休日が確定されるものです。
【代休付与の仕方のルールを確立する】
以上の考え方を前提にして代休付与に関するルールを決めておくことが無用な混乱を招かないために必要でしょう。
まず使用者が代休日を指定するという原則を明確にする。就業規則等でもそのように規定しておくことです。
実際の運用では、労働者の希望も聞いて、日程を相談するようにすることは構わないですし、そうした方が混乱を招かないと思います。就業規則等でそのように定めておくことも可能です。
なお、決まった代休日に年次有給休暇を請求することはできません。休暇は労働義務のある日に、その就労義務の免除を得ることをいいますから、そもそも代休日と指定された日に有給休暇の申請はできません。