労使トラブル110番
過半数以下の労働組合との
「協定」の意味と効力
Q
弊社にある労働組合は組織率が過半数に達しておりません。このたび、労働組合と締結した「協定」と就業規則との間に食い違いがあることが判明しました。どのように考えたらいいのでしょうか?
A
【法律上の労使協定とは】
労働基準法や育児介護休業法などでは、労使協定の締結を条件に原則を緩和したり、適用を除外する規定があります。原則的法定労働時間を変形する変形労働時間制や専門業務型裁量労働制を導入するためには労使協定の締結が必要ですし、育児介護休業法の適用対象を一部除外する際にも労使協定の締結が必要です。
労使協定の締結当事者は、事業主または使用者を一方とし、もう一方は過半数労働組合または過半数代表者となります。ということは、労働組合が過半数労働組合でない場合は、過半数代表者を選出し、過半数代表者との間で労使協定を締結しなければ法律上の労使協定とはならないということです。
【過半数未満の労組との間の「協定」の意味は】
労働組合法第14条は、「労働組合と使用者またはその団体との間の労働条件その他に関する労働協約は、書面に作成し、両当事者が署名し、又は記名押印することによってその効力を生ずる」としています。「署名又は記名押印」という要件を満たせば、労働組合と使用者との間で結んだものは労働協約となります。
労働協約の適用範囲は、労働者側については、原則として、労働協約の当事者である労働組合及びその構成員に限られます。但し、労働組合法第17条で、「一の工場事業場に常時使用される同種の労働者の四分の三以上の労働者が一の労働協約の適用を受けるに至ったときは、当該工場事業場に使用される他の同種の労働者に関しても、当該労働協約が適用されるものとする」と定めていますので、4分の3以上が労働組合員である事業場では労働組合員以外の者にも適用されることになります。
【効力順位は?】
次に、労働協約、就業規則、労働契約の効力順位はどうなっているのでしょうか?
まず法令が最優先の効力順位となることは言うまでもありません。効力順位とは、法令で定める基準に達しない就業規則、労働契約は無効となり、自動的に法令の基準が適用されるということです(逆に言えば、法令を上回って就業規則、労働契約で基準を定めることはいいということです)。同様に、就業規則の基準に達しない労働契約についても、達しない部分は無効となり、就業規則が適用されます(労働基準法第93条)。
ですから、一般的には「法令>労働協約>就業規則>労働契約」という効力順位となるのですが、労働協約については、「(労働協約に)違反する労働契約の部分は、無効とする」(労働組合法第16条)と法律的に強制的効力を持たせています(つまり、労働協約を上回る労働契約であったとしても労働協約が強行的に適用されるということです)。この辺は扱いが違いますので、注意が必要なところです。
【労働協約の期間】
ご質問では、労働協約と就業規則との間に食い違いがあるということでした。もしその矛盾を解消しなければならないとお考えの場合、労働協約の期間について次のように定めていますので、ご検討ください。
1 労働協約には、三年を超える有効期間の定をすることができない。
2 三年をこえる有効期間の定をした労働協約は、三年の有効期間の定をした労働協約とみなす。
3 有効期間の定がない労働協約は、当事者の一方が、署名し、又は記名押印した文書によって相手方に予告して、解約することができる。一定の期間を定める労働協約であって、その期間を経過後も期限を定めず効力を存続する旨の定めがあるものについて、その期間の経過後も、同様とする。
4 前項の予告は、解約しようとする日の少なくとも九十日前にしなければならない。