労使トラブル110番
在宅勤務に事業場外労働みなし制を適用する場合の留意点
Q
コロナ感染の拡大とともに在宅勤務を行っています。会社からは事業場外労働みなし制を適用し、「所定労働時間働いたものとみなします」と言われています。しかし、与えられた業務量は着実に増え、毎日所定労働時間を超える勤務となっているのが実際で、残業代も支払われていません。これっておかしくないですか。
A
【事業場外労働みなし制とは】
労働基準法第38条の2第1項では、労働者が労働時間の全部または一部について、事業場外で業務に従事した場合において、労働時間の把握が困難なものについて、原則として所定労働時間労働したものとみなすことを定めています。同条1項但書は、事業場外における業務に「通常必要とされる時間」が所定労働時間よりも長くなる場合には、「通常必要とされる時間労働したものとみなす」ことを定めています。
さらに同条2項は、前記但書の場合であって、労使協定が締結されているときには、その協定で定める時間を事業場外での業務の遂行に通常必要とされる時間とすることを定めています。
【テレワークガイドラインでは】
厚労省が出している「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」では、「様々な労働時間制度の活用」の一つとして事業場外みなし労働時間制の活用をあげています。テレワークにおいてこの制度を適用できる条件とし、「①情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと、②随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと」の2つをあげています。厚労省の立場は、積極的活用を呼び掛けるスタンスであるといえるでしょう。
しかし気を付けなければならないのは、留意点として、「事業場外みなし労働時間制が適用される場合には、必要に応じて、実態に合ったみなし時間となっているか労使で確認し、使用者はその結果に応じて業務量等を見直すこと」としていることです。
【テレワーク勤務に潜むリスク】
テレワークは、業務効率化により時間が労働の削減につながるメリットが期待される一方、労働者が使用者と離れた場所で勤務するため使用者の管理の程度が弱くなり、仕事と生活の時間の区別があいまいとなり、長時間労働を招くおそれがあります。この点では、労使の合意により、時間外労働が可能な時間帯や時間数をあらかじめ設定すること、その場合の手続きなどを明確にしておく必要があります。
【ご質問のケースの対応】
ご質問のケースでは、事業場外労働としてみなす時間が、「所定労働時間」ではなく、「通常必要とされる時間」であるようです。仮に、所定労働時間とみなすならば、その範囲で業務をこなすことができるよう業務量の調整が必要でしょう。
「通常必要とされる時間」とみなす場合で、その時間が法定労働時間を超えるならば、割増賃金の支払いが必要となります。
それらを含めて労使での話し合いをきちんとやる必要があります。