労使トラブル110番
コロナ感染等をめぐるケースごとの事業所の対応の仕方
Q
規制緩和が進む中で年末にかけて新たなコロナ感染者の増大も予想されています。感染者となった場合、濃厚接触者の場合などそれぞれのケースごとに事業所としてどう対応するのか改めて教えて下さい。
A
【コロナ感染者に関する法律の定めとは】
(1)感染症法上の位置づけと使用者の補償義務
新型コロナが数年前に発生したとき、政府は感染症法上の就業禁止の疾病として位置付けました。感染症法においては、新たに発生したウイルスについて、その都度分類を決めますが、新型コロナは感染者を就業禁止とする分類としたということです。この分類になると、感染者は法律的に就業できないということですから、事業主には労働基準法上の休業補償義務は発生しません。感染者本人は4日以上休業せざるを得ない場合、健康保険の傷病手当金を受給できます。
(2)労災保険法上の対応
コロナ感染者が、業務上感染した場合、労災保険の補償を受けられます。具体的には、休業補償(給与の8割補償)と療養補償(病院の治療費の補償)を受けられるということです。
労災保険の補償は、業務遂行性(仕事をしている最中に感染した)と業務起因性(仕事が原因で感染した)の証明が必要になりますが、コロナ感染の場合は仕事以外に感染原因が見当たらないこと(家族感染がない、飲食等を共にしたことがないなど)が証明されればいいという扱いとなっています。医療・介護関係の職員は可能性が高く、他にも接客業もその可能性が高いと判断されます。
【濃厚接触者の場合】
家族に感染者が発生したなどにより濃厚接触者となった場合はどういう扱いになるのでしょうか。パターンごとに判断する必要があります。
(1)行政の指示による休業の場合
保健所等の指示により休業する場合は事業主に休業補償義務はありません。
(2)自主的休業の場合
濃厚接触者であると自己が判断して仕事を休む場合はただの欠勤扱いとなります。
(3)事業主の指示による休業の場合
一方、行政の指示ではなく、事業所が判断して仕事を休ませた場合は、事業所として休業補償(平均賃金の6割以上)をしなければなりません。
【会社として就業規則で制度を定める】
コロナ感染に伴い、会社としていろいろな対応が求められる場合があります。例えば、職場に感染者が生まれたときに、顧客との関係で出社を制限しなければならない場合もあるでしょうし、家庭の事情などで出社を控え在宅勤務をしたい、出勤・退社時間をずらしたいなどの要望にどう対応するかという問題もあります。
業種、会社の実態によってそれはさまざまです。会社の実態に合わせて、従業員の要望なども踏まえて、就業規則で、特別休暇制度を設けるとか、部門ごとの休業制度を設けるとかもあるでしょう。在宅勤務制度を設けるならば、その規程を定めておいた方がいいと思います。
【コロナの影響で仕事が減ったとき】
感染者や濃厚接触者の対応とは別に、コロナの影響で仕事が減る、一部閉業せざるをえないなどの事態が生じたときは、全部又は一部の従業員を休業させることもあります。この場合はもちろん休業補償をしなければなりませんが、支払った休業補償に対してコロナ特例の雇用調整助成金を支給することとなっています(11月までは特例措置がとられています。12月以降のことはまだ発表されていません)。この助成金で何とか乗り切ったという会社も少なくありませんので積極的に活用した方がいいでしょう。