労使トラブル110番

タイムカード打刻時間の訂正と端数処理の原則



Q
 弊社はタイムカードで労働時間の把握するシステムとしています。ところがタイムカード打刻時間と就業開始時間には毎日若干のズレが生まれているという実態があるため、毎日5分間を切り捨てて計算しています。こういうやり方はまずいのでしょうか?



A

【タイムカード打刻時間は労働時間か?】


 労働時間の把握方法が、タイムカード方式によるとしている会社においては「タイムカードの打刻時間=労働時間」とみなされますが、そうではないやり方をとっている会社も多数あります。パソコンのログイン時間で管理しているとか、現場に直行する場合は現地から電話をさせるとか、使用者による現認方式をとっている、自主申告方式など様々です。
 郊外型の店舗に勤務し、車で通勤するような場合、タイムカード打刻時間と勤務開始・終了時間がかなりズレるのが常態化しているという例があります。問題は労働時間を把握するのに、何が一番合理的な方法かを決めることです。
 平成29年1月29日に発表された「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」という基本通達では、原則的な把握方法は①「使用者が現認する」方式と、②「タイムカード、ICカード、パソコン記録等の客観的な記録を基礎として適正に記録する」方式のいずれかであるとしています。例外として、③「自主申告」方式をとる場合もあるがその場合はかなり厳しい前提条件が課されています。
 実態に合わせて、②のタイムカード方式をとるが、最終的に①「使用者が現認する」ことによって記録して管理するという場合もあるでしょう。把握方法をきちんと会社が決めることです。  


【「賃金計算の端数の取扱い」(昭63.3.14基発150号)】


 次に端数処理の原則についてですが、これは上記通達によって下記のルールが定められています。

 賃金計算において生じる労働時間、賃金額の端数の取扱いについては次のように取り扱われたい。

一 遅刻、早退、欠勤等の時間の端数処理
  五分の遅刻を三十分の遅刻として賃金カットをするというような処理は、労働の提供のなかった限度を超えるカット(二十五分についてのカット)について、賃金の全額払の原則に反し、違法である。なお、このような取扱いを就業規則に定める減給の制裁として、法第九十一条の制限内で行う場合には、全額払の原則には反しないものである。

二 割増賃金計算における端数処理
  次の方法は、常に労働者の不利となるものではなく、事務簡便を目的としたものと認められるから、法第二十四条及び第三十七条違反として取り扱わない。
 (一) 一か月における時間外労働、休日労働及び深夜業の各々の時間数の合計に一時間未満の端数がある場合に、三十分未満の端数を切り捨て、それ以上を一時間に切り上げること。
 (二) 一時間当たりの賃金額及び割増賃金額に円未満の端数が生じた場合、五十銭未満の端数を切り捨て、それ以上を一円に切り上げること。
 (三) 一か月における時間外労働、休日労働、深夜業の各々の割増賃金の総額に一円未満の端数が生じた場合、(二)と同様に処理すること。

三 一月の賃金支払額における端数処理
  次の方法は、賃金支払の便宜上の取扱いと認められるから、法第二十四条違反としては取り扱わない。なお、これらの方法をとる場合には、就業規則の定めに基づき行うように指導されたい。
 (一) 一か月の賃金支払額(賃金の一部を控除して支払う場合には控除した額。以下同じ。)に百円未満の端数が生じた場合、五十円未満の端数を切り捨て、それ以上を百円に切り上げて支払うこと。
 (二) 一か月の賃金支払額に生じた千円未満の端数を翌月の賃金支払日に繰り越して支払うこと。


 上記にあるように、労働時間の端数処理は、あくまでも1ヵ月単位に行うこと(1日単位の端数処理は認められない)、「労働者の不利となるもの」であってはならないことがルールです。
 そうすると、御社のやり方は、1日単位で行っている点でも、切り捨てのみで行われている点でも、違法なやり方と言わざるを得ません。労働時間の把握の仕方も含めた検討が必要です。



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