労使トラブル110番

出向者に対する出向元の就業規則、出向先の就業規則の適用関係は?



Q
  弊社は一定数の出向労働者を受け入れています。ある出向元では有給休暇の付与日数が法定日数を上回って付与され、弊社より多く付与されています。一般的に、「労働時間、休憩、休日及び有給休暇部分」は出向先の規定に従うとなっているはずですが、この場合どう考えればいいのでしょうか。



A

【二重の労働契約が成立】


 出向後の労働関係は、理論的には、出向先にも労働契約が成立し、出向元との労働契約と併せて二重の労働契約が成立します。二重の労働契約の意味は、契約上の権利義務が重複して出向元と労働者間、出向先と労働者間に存在しているのではなく、契約上の権利義務が出向元と労働者間、出向先と労働者間に分かれて存在していると考えます。
 したがって、出向元の就業規則は全面的に出向者に適用されず、その出向の形態によって一部凍結される部分が存在するし、また出向先の就業規則も出向元と労働者間から、出向先と労働者間に移転した部分の権利義務に相応する部分が適用されることになります。本来、出向は、労働者に出向元に在籍したまま出向先において出向先の指揮命令下で労務を提供するということですから、次のような適用関係にあると考えます。
  ① 労務提供を前提としない部分については、出向元の就業規則の適用がある。
  ② 労務提供を前提とする部分については、出向先の就業規則の適用がある。

 そうすると、たしかに「労働時間、休憩、休日及び有給休暇部分」は出向先の就業規則の適用を受けるというのが一般的考え方です。  


【出向先の有給休暇処理の関係は】


 出向が、契約上の権利義務が出向元と労働者間、出向先と労働者間に分かれて存在すると考えると、出向者は出向元で有していた有給休暇の残日数について、出向先で消化することになります。仮に、出向先が労使協定を結び、計画年休制度を採用していたとするならば、有給休暇の消化方法も出向先の計画年休で消化することになるでしょう。また、次年度の有給休暇の取得については、主に出向先(場合によっては出向元も)における出勤率により判断します。
 ところで、法定休暇を上回る有給休暇日数は、出向元と出向先で必ずしも一致しません。この場合、取得日数は原則として出向元を基準とします。なお、出向先の方が所定有給休暇日数が多い場合は、出向者はその日数を取得すると考えるべきです。
 あるいは、出向元の方が多い場合、使用者は出向時にその差の日数を復帰時に一括して取得させるか、買い上げるなどの対策を考えることができます。この場合、法定有給休暇日数を上回る所定有給休暇を買い上げることは労基法違反にはなりません。


【他にも問題となるケース】


 ほかにも出向先の割増賃金率が出向元の割増賃金率より低い場合があります。この場合も、出向元の率を基準とすべきでしょう。賃金を出向先が支払っている場合は、各月の出向者の時間外労働について、出向先が出向元の割増賃金率で精算して支払うことになります。ただし、出向元と出向先との契約で、その率の差額についてどちらが負担するかを事前に協定しておく必要があります。   



時言 労使トラブル 年金相談

ハラスメント



ACCESS

〒169-0075
東京都新宿区高田馬場2-14-2
新陽ビル507号室
TEL 03-6280-3925
>>お問い合わせフォーム
>>詳しいアクセス情報

ページTOPへ