労使トラブル110番

リファラル採用(縁故採用)のメリットとリスク



Q
  医療法人ですが、昨今、看護師をはじめとする職員の採用に苦労しており、有料職業紹介会社に依頼すると1人当たり100万円を超える報酬を業者に支払わなければなりません。そこで、医療法人職員に知人を紹介してもらう制度を始めたいと思いますが、違法とならないかという不安の声も出されています。 



A

【有料職業紹介業と縁故採用の違い】


 有料職業紹介業者というのは、有料で、求人者(会社)と求職者(労働者)との間の雇用をあっせんする業者のことです。一般に、紹介して雇用が成立したときに、給与額の半年分が紹介料とされるなど、100万円を超えるのが相場とされています。その分職業安定法によって、規制も多く、もちろん事前に許可をとらなければ事業は展開できません。
 これと違ってリファラル採用というのは、会社の従業員などに職員となる人を紹介してもらう縁故採用のことで、欧米では主要な採用方法のひとつとされています。
 医療関係や介護関係、保育園などでは、ハローワークで求人しても競争率が高くとても採用に至らず、有料職業紹介業者を使うと出費がかさむということで、リファラル採用にシフトするところも増えています。  


【リファラル採用のメリットとデメリット】


 ではリファラル採用にはどのようなメリット、デメリットがあるのでしょうか。
① 転職潜在層にリーチする
 転職潜在層の一定部分は、職業紹介業者に応募しており、そういう層を採用しようとすると他社よりも飛びぬけて良い条件を出す必要に迫られます。そういう転職マーケットに出ていない転職潜在層にアプローチできるのがリファラル採用です。
② 入社につながりやすい
 一般の採用においては、応募者に内定を出しても一定割合で内定辞退者が現れます。この点で、リファラル採用は会社の従業員、知り合いからの紹介となりますから、内定辞退率は他と比べて低くなることが期待できます。
③ 入社後のミスマッチが起こりにくい
 業者からの採用では、入社後短期間で退職してしまうケースがどうしても多くなります。それと比べてリファラル採用では、あらかじめ会社の従業員から仕事内容や社風など「生きた」情報をリサーチしていますから、入社後のミスマッチによる離職は起こりにくくなります。
④ 採用コストの削減
 100万を超える紹介業者への報酬の支払と比べると採用コストは大幅に削減することができます。
⑤ 人材の画一化のリスク
 社員からの紹介によりますから、往々にしてその紹介者である社員と似たような人材が集まりやすくなります。それが人材の画一化、派閥化のリスクとなる可能性があります。


【リファラル採用が違法とならないために】


 リファラル採用に至った人材を紹介した従業員に対して、会社がインセンティブを支払った場合、職業安定法第30条の「有料の職業紹介事業を行おうとする者は、厚生労働大臣の許可を受けなければならない」という規定との関係が問題になります。
 しかし同法第40条では次のように規定しています。
 職業安定法第40条
   労働者の募集を行う者は、その被用者で当該労働者の募集に従事する者
   または募集受託者に対して、報酬を与えてはならない。
   ただし、賃金・給料またはこれらに準じるものを支払う場合、
   または報酬の額について事前に厚生労働大臣の許可を得ている場合を除く。

 「ただし」書きに違法とならない条件が書かれています。
① 就業規則や賃金規程を整備する
 労働基準法において、賃金や給料に関する事項は絶対的必要記載事項として必ず就業規則に明記しなければならないとしています。リファラル採用に関するインセンティブを賃金や給料の形で支払う以上は、支払い時期や支給額、支払い条件を必ず就業規則に明記しておかなければなりません。(別規程としてもかまいません)
② 高額な報酬としない
 支払う報酬があまりにも高額である場合、それを受け取る従業員は「業」として人材紹介を行っているものとみなされる可能性があります。つまり支払う報酬は「業」としてみなされない範囲内である必要があります。一般の職業紹介事業者に支払う報酬が年収50%程度が相場であるとするなら、おおよそ30%未満に抑えておくことが望ましいと思われます。  



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