労使トラブル110番
コロナ感染者・濃厚接触者等への休業手当支払い義務は?
Q
コロナ感染が広がって、弊社でも感染者、濃厚接触者、子どが感染して休まざるをえなくなった人などいろいろ出てきました。こうした場合の休業補償義務はどう考えればいいのでしょうか。
A
【感染者の場合】
法律上、就業禁止とされるものは、労働基準法、労働安全衛生法などによって女性や年少者などが危険有害業務についてはならないとされているもののほか、感染症法で定められた疾病についても就業禁止とされています。新型ウイルスについては歴史的にもさまざまなものが発生しており、それはその都度就業禁止とするかどうかを決めることになっています。コロナウイルスについては就業禁止の疾病と区分されましたので、就業禁止となります。将来、このウイルスが感染症法上の区分が変わり、季節的インフルエンザと同じ区分に指定されれば、休ませたときの休業手当支払い義務は発生することになります。
コロナ感染そのものは事業主の責任によって発生したとは言えませんから、感染者を休ませても休業手当を支払う義務はありません。この場合、従業員の意向により、欠勤扱いとするか、有給休暇を使用するかを決めていくことになります。
また、条件に合致すれば(4日以上の休業など)、健康保険の傷病手当金が支給される場合もあります。PCR検査で陽性となった場合や医師の診断により自宅療養となった場合は支給されます。
さらに、コロナ感染が業務上の理由で発生した場合、労災保険の給付の対象ともなります。病院の職員は労災保険の給付対象となるケースが多いようです。
【濃厚接触者等の場合】
濃厚接触者や感染が疑われる場合で、会社を休ませたときはどうなるでしょうか。いまのところ法律上就業禁止とすることになっていませんので、休業手当を支払う義務があります。保健所から外出自粛を求められたとしてもその扱いは法律上変わらず、休業手当を支払わなければなりません。
ただし、休ませる理由が、感染拡大防止の観点から自主的措置として行われた場合で、一定の条件に合致すれば、雇用調整助成金の対象となることもあります(助成金の特例措置も3月一杯で終了となりますが)。
【子の世話のために休む場合】
最近は子どもが学校や保育園等で感染するケースが増えています。そうなると子どもは登校・登園できませんから、親が仕事を休まざるを得なくなったり、子どもから親が感染する例も生まれています。この場合も、欠勤か有給休暇を選択して対応せざるを得なくなります。
ただし、会社として有給休暇とは別の休暇制度を設け付与する措置をとった場合は、小学校休業等対応助成金が支給されます。
【会社としての休暇制度等の整備を検討】
以上はあくまでも法律に基づく対応、措置について記しました。政府はそれぞれの会社が独自の休暇制度を設けることを呼び掛けています。
新たな変異株の発生も予測され、コロナウイルスとの共存は長期化する可能性が指摘されています。従業員にとっては感染の恐怖とともに、生活保障への不安も長引くこととなります。そうしたときに、安心して働ける職場を作ることは会社にとっても重要といえます。もちろん会社の規模等条件はそれぞれですが、会社独自のコロナ休暇制度などを設けることも検討してみてください。