労使トラブル110番
複数の事業所を抱える法人における労使協定・過半数代表者選任のあり方
Q
事業所が十数か所あり、過半数を代表する労組がない法人です。36協定をはじめとした労使協定を結ぶ労働者代表の選任が難しくアドバイスをいただきたいのですが。とくに、選任方法、任期について。
A
【その都度過半数代表者選任手続をとらなければならないのか?】
労働基準法の定める労使協定は、36協定だけでなく、1年単位変形労働時間制、フレックスタイム制、事業場外労働のみなし労働時間制、裁量労働のみなし時間、計画的年次有給休暇などがあります。さらに、労働安全衛生法、派遣法、育児介護休業法、高年齢雇用安定法その他多くの法律で労使協定があります。過半数を組織する労働組合があればその代表との間でその都度これらの法律的要件に沿った労使協定を締結できるのですが(もちろん労働協約という意味で労働組合と協定を結ぶことはありますが)、そうした労働組合がない場合は、その都度、選出の趣旨を明確にして過半数代表を選出する必要があります。
過半数代表の選出は、通常、「挙手」又は「選挙」等の方式をとります。小規模会社で事業場の数も1つ、2つであればそれほど苦労せずに選出できますが、貴社のように事業場の数が多い場合、「挙手」方式での選出は無理ですし、「選挙」を毎回やるのも苦労があります。こうした場合、就業規則に規定を置き、「常設的代表者制度」をとることも可能です。就業規則では次のような規定を定める必要があります。
〇選出手続き…事業所ごと(課ごと)、●名単位で代表者を選出し、選出された代表者の互選により労働者代表1名を選出することなど
〇任期…原則として1年とし、いつからいつまでとするか。また、労働者代表が欠けた場合の補選手続
〇職務…法令に従って次の職務を行うとし、いかなる協定の締結を行うかを明示
(例)36協定
就業規則の制定、変更の際の意見表明
育児介護休業法の除外に関する協定 など
〇意見表明…労働者が労働者代表に意見がある場合の表明権
〇労使協定の周知…会社の労使協定周知義務を明記
【任期は1年間が原則】
36協定の有効期間は通常1年間とされていますが、他の労使協定の有効期間は必ずしも1年間と限定されているわけではありません。協定ごとにその都度労働者代表を選出する場合は、協定を締結して任期は終了するわけですが、労働者代表制をとる場合はきちんと任期を定める必要があります。もちろん選出時には労働者の過半数を代表しているわけですが、その後入退社などがあると必ずしも過半数を代表しなくなる可能性がありますので、あまり長い期間を任期とするのは適切ではないでしょう。したがって、1年間を任期とするのが許容範囲と考えられます。
【使用者の依頼で決められるか】
法律上、労働者代表は「監督又は管理の地位にある者」でないことが必要です。また、選出の趣旨を明らかにし実施される投票、挙手等の方法による手続きにより選出された者で、「使用者の意向によって選出された者でないこと」が求められます。
では、使用者は依頼することを一切禁止されるのかというと、そういうわけではありません。労働者に趣旨を明確にし、立候補を依頼して選出できない場合でも、使用者があらかじめ依頼した人が立候補の意思があるのであればそれはかまいません。あくまでも労働者の代表者としての選出がなされることが要件ですので。