労使トラブル110番
治療と仕事の両立支援制度の検討
Q
ある職員が難病に罹患しました。この難病は薬の投与による治療で通常の人と同様の生活が可能な病気です。月1~2回程度の通院が必要です。
この間、通院の日について有給休暇で対応してきましたが、ご家族の病気等で有給休暇を使うことも少なくないため、結果的に欠勤扱いとなる日も生まれています。
職員から病気に罹患しても安心して就業を続けられるように、通院休暇などの導入を検討して欲しいとの要望が出されています。
A
【疾病を抱える労働者の就業可能性の向上と課題】
「近年の診療技術や治療方法の進歩により、かつては『不治の病』とされていた疾病においても生存率が向上し、『長く付き合う病気』に変化しつつあり、労働者が病気になったからと言って、すぐに離職しなければならないという状況が必ずしも当てはまらくなってきている。」とくに「がん、脳卒中、心疾患、糖尿病、肝炎、その他難病など、反復・継続して治療が必要となる疾病(短期で治癒する疾病ではなく)」を対象にした検討が求められています。(以上、厚労省「両立支援のためのガイドライン」より)
現状は、こうした疾病に対する理解や配慮が不十分なため、「仕事が忙しいから」治療を中断したり、離職してしまったりするケースが多い。もちろん、会社の規模や経営資源によって対応できる範囲も違うのは当然ですが、その中でも最大限できる努力の範囲で検討したいと思います。
【休暇制度、勤務制度の検討】
病気の種類や状況によって、短時間の治療が定期的に繰り返される場合、就業時間に一定の制限が必要な場合、通勤による負担の軽減のため出勤時間をずらす必要がある場合など千差万別です。また、各事業場の実情に応じて導入できる制度も違ってきます。それを踏まえて、上記ガイドラインではいくつかの例を提示されています。
①休暇制度
〇時間単位の年次有給休暇
…労使協定を結べば、1時間単位で有給休暇を与えることができます(上限は1年で5日分まで)。
〇傷病休暇・病気休暇
…事業者が自主的に設ける法定外の休暇です。年次有給休暇とは別に付与するものです。一定期間まとまって休職できる制度をとっている会社は多いと思いますが、短期間の通院・入院等にも対応できる休暇制度も検討できます。また、有給とするか無給とするかは事業場ごとに異なります。
②勤務制度
〇時差出勤制度
…始業及び終業時間を変更し、身体に負担のかかる通勤時間帯を避けて通勤します
〇短時間勤務制度
…療養中・療養後の負担を軽減すること等を目的として、所定労働時間を短縮する制度
〇在宅勤務(テレワーク)
〇試し出勤制度
…長期間にわたって休職していた労働者に対して、円滑な復職を支援するために、勤務時間や勤務日数を短縮した試し出勤等を行うもの
【相談窓口の設置、個別事情ごとの配慮】
治療と仕事の両立支援は、健康診断で把握した場合などを除いては、あくまでも労働者からの申出を原則とします。したがって、労働者が安心して相談・申出を行えるよう、相談窓口を設置し、申出を受けた際の情報の取扱い等などにつきよく相談できるようにする必要があります。
また、労働者及び(労働者本人の同意を得た上で)主治医からよく情報を収集し、それを参考に、就業上の措置その他の措置や配慮の内容、スケジュール等をまとめた計画(「両立支援プラン」)を策定します。