労使トラブル110番

待機時間と見るか、仮眠時間と見るかの分かれ目



Q
立体駐車場の設置、メンテナンスの事業を行っています。
機械が壊れたときなどのメンテナンス業務があるため、昼間の通常業務以外に、毎日一定人数で夕方から夜にかけての待機、夜半の仮眠しながらの待機を交代で行っています。
通常業務から引き続いて夜勤務、さらに夜間勤務に入ると長時間労働になってしまい、従業員から長時間労働に対する不満も多く、また夜勤務と夜間業務に対する一定の手当も支払っているのですが、「正確に計算した残業代として支給して欲しい」という声も出されています。
一体どのように対応したらいいのか、アドバイスをお願いします。



A

【シフト制による交替勤務か、1ヵ月単位の変形制に転換を】


まず朝から夕方までの通常勤務から引き続き夜勤務、夜間勤務に一定人数がそのまま移行するという勤務形態の改善が必要です。もし、通常勤務からそのまま移行するとするならば、1ヵ月単位の変形労働時間制を採用しなければなりません。1ヵ月単位の変形労働時間制とは、1ヵ月平均して週40時間という法定労働時間以内の勤務時間とする制度です。1ヵ月平均ですから、31日の月ならば「31÷7日×40時間≒177時間」、30日の月ならば「30÷7×40≒171時間」内に労働時間を収めるようにしなければなりません。病棟勤務の看護師さんなどが1ヵ月間に数日間夜勤勤務する場合にこの制度を採用しています。もちろん、夜勤明けは休日にするなどきちんとした勤務体系としなければなりません。

1ヵ月変形制の採用が難しい場合には、夜勤務する日は昼間の通常勤務を免除し、夕方からの勤務にするようにし、それを交替で行う全員分の1ヵ月間のシフト表を作成して勤務するようにします。

いずれの形態であっても、所定労働時間が法定労働時間(1日8時間・週40時間)内に収まるように設定することが大前提です。


【夜間勤務は待機時間なのか、仮眠時間なのか、位置づけを明確にする】


次に夜間の勤務についての検討が必要です。「仮眠しながら待機する」ということですが、どの程度の頻度で出動しなければならないのか? 仮眠は仮眠室が確保されたものなのか? です。それによって、夜間勤務が「待機時間=労働時間」なのか、「仮眠=休憩時間」なのか判断が変わってきます。

マンションの住み込み管理員の手待ち時間に関する裁判では、管理員室の証明の点・消灯、ごみ置場の扉の開・施錠、冷暖房設備の運転開始、運転の停止、駐車場の確認、住民や外来者からの宅配物の受け渡しの随時対応等につき、使用者から指示されていた時間については、居室における不活動時間も含め労基法上の労働時間としています(最高裁、平成19.10.19大林ファシティーズ事件)。一方、「時間外の作業の指示が認められない場合には、(中略)原則として、労働時間ということはでき」ない、実際に発生した緊急事態等に対応した実作業時間のみを労働時間として認めることが相当である(新日本管財事件、東京地裁平18.2.3)としています。

ビル警備員やタクシー運転手などの会社施設内の仮眠時間については、仮眠時間中に発生する種々の業務に対応する仮眠設備のない仮眠室とは別に、仮眠設備のある仮眠室を設けている場合のそこでの仮眠時間中については、遂行業務がまれなので、労働時間には当たらない(日本ビル・メンテナンス事件、東京地裁平18.8.7)とし、仮眠時間後の勤務時間は、新たな日の労働というべきであるので、時間外労働には当たらないとしています。

夜間の仕事の頻度、仮眠設備の有無を判断して、仮に労働時間に当たらないようであれば、夜勤務からそのまま夜間の仮眠体制に入り、仮眠明けの翌日の通常勤務に移行しても通常勤務は時間外労働とはなりません。もちろん実際に出動した場合は、通常の時間給部分の時間外割増および夜間割増(1.5倍)の給与支給が必要であることはいうまでもありません。逆に、夜間の勤務が労働時間に該当すると判断されるならば、それにふさわしい変形労時間制の採用も含めた検討が必要となります。



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