労使トラブル110番
夜勤勤務者の年次有給休暇は2日分の年休となるか?
Q
介護施設の事業所です。従業員の働き方は、日勤(1日7時間勤務)と、夜勤(16時~翌日9時の16時間勤務)をシフトによって交替する勤務です。
夜勤勤務の日に年次有給休暇を取りたいという方がおられたのですが、その方の有給残日数は1日でしたので、「1日分は有給となりますが、もう1日分は欠勤扱いとなります」と答えました。
夜勤勤務の場合の有給休暇は2日分の取得とみなして構わないのでしょうか?
A
【「労働日」は暦日が原則】
労働基準法第39条は「使用者は6箇月継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない」と規定しています。
ここで「分割して」といっていますが(半日単位又は1時間単位の取得も可とされています)、結局分割の最小単位は「労働日」単位となっています。
「労働日」とは、原則として暦日計算によるべきものですから、当日の午前0時から午後12時までの暦日24時間を意味しています。
したがって、年休日の単位である「一労働日」と、就業規則・雇用契約書で定めている労働時間(勤務時間)の「1日」とは意味が違うのです。
有給休暇の取得をめぐってよくある質問で、当日の有給申請を認めるかどうかというのがありますが、法律上は有給休暇の「労働日」が既に開始されている以上、当日の有給申請は認めなくてもよい(もちろん認めてもいいですが)ことになります。
【二暦日にわたる勤務の場合】
一勤務16時間の隔日勤務や一勤務24時間の一昼夜交替勤務など一勤務が二暦日にわたる場合も暦日の原則が適用され、「一勤務の休暇は二労働日の年休となる」(昭和33.2.1基発90号)とされています。
午前0時をまたぐ勤務を1回休んで年休をとるためには、原則として二労働日の年休の取得となります。
もちろんこの場合の年休手当も二労働日分の賃金を支給しなければなりません。
ご質問のケースも、会社の対応は正しい対応といえるでしょう。
【著しく不合理となる場合の対応】
以上のように年休の「労働日」は原則として暦日制ですが、この原則を適用すると著しく不合理な結果となる場合があります。
例えば、1日8時間の所定労働時間が午前0時を挟む2暦日にまたがるような場合です。昔なら炭鉱労働者が8時間3交替制勤務をとって、その3番方は2歴日にまたがる交替勤務でした。
いまなら、夜10頃に市場に野菜をとりに行き、翌朝6時頃までに飲食店に野菜を降ろすような八百屋さんのような勤務形態もあります。昼と夜がひっくり返って、実働8時間勤務を毎日行っている場合などです。このような勤務形態にも暦日原則を適用して、1回の有休=2日分としてしまうと不合理といえます。
こうした場合は、その「勤務時間を含む継続24時間を一労働日として取り扱って差し支えない」(昭和63.3.14基発150号)とされています。もともと年休の目的は労働者の休養の確保ということですから、その目的を達しうる限りでは比較的広く例外を認めても差し支えないということでしょう。