労使トラブル110番
3年前に結婚した従業員から「結婚休暇」取得の要望 ~「特別休暇」規定によくある曖昧さ
Q
3年前に結婚した従業員から、「この間忙しくて休暇を取れなかった。ようやく取れそうなので結婚休暇を取得したいという要望が出されました。
全く想定していなかった申し出なので「時効」で消滅したと言いたいのですが。
A
【よくある特別休暇規定の例】
こうした問題が生まれてくる背景には、就業規則の特別休暇(又は慶弔休暇)規定の曖昧さがあります。よく見かけるのは次のような規定です。
---------------------------
(特別休暇)
第25条 従業員が次の各号の一に該当するときは、それぞれに定める日数の特別休暇を与える。
1 本人が結婚するとき 5日
2 父母、配偶者又は子が死亡したとき 5日
3 祖父母、兄弟姉妹、孫、配偶者の父母が死亡したとき 3日
---------------------------
休暇事由と日数だけ書いてありますが
①休暇日数には所定休日が含まれるのか、含まれないのか
②連続取得が原則なのか、分散取得も可能なのか
③取得できる時期は限定されているのか、無限定か
という疑問が生まれます。
今回の場合は、結婚休暇を3年後に取得したいというケースですが、休暇日数だけの規定だとこういう問題が生まれてきます。
一般的には、結婚休暇は結婚式(又は婚姻届出)後1年程度の期間の間に限定する、死亡休暇は死亡日(又は葬儀の日)から連続して取得すると規定しているところが多いようです。休日を含んだ日数とするかどうかはばらつきがあります。
ご質問のケースでは、現規程からすると認めざるを得ないと思いますが、今後については規程の改定を急いだ方がいいでしょう。
【コロナ禍という新たな事態のもとで】
現行法のもとでは年次有給休暇以外に休暇の付与義務はありません。慶弔休暇などは会社の任意の規定になります。
一方、コロナ禍のもとで、保育園や学校が休園・休校となり保護者も休まざるを得なくなる、妊娠中の女性がコロナ感染を危惧して休業したいと考えているとき、あるいはコロナ患者は法律上休業させなければならないという扱いとなっているものの、濃厚接触者の休業補償についてはとくに法律的定めはありません。
こうした事態にどう対応するのか、有給休暇によって対応するだけでよいのか、有給休暇の残日数のない者についてはどうするのか、という新たな問題が発生しています。
さらに、感染症というのは今後コロナに限られるわけではなく、天災事変や災害なども想定されます。
こうした事態に柔軟に対応できるよう、特別休暇制度に関する規定を就業規則に盛り込んでおいた方がよいと思います。
規定の仕方としては、一つは、特別に、例えば「感染症等に係る休暇」という条文を作るというやり方もあります。もう一つは、現行の特別休暇の規定の中に「その他」という項目をつくり、「会社が特別に必要と認めた場合」について、「会社が必要と認めた期間」を休暇とするという規定の仕方もあります。貴重な人材を失わないために、検討していただきたいと思います。
【テレワークを新たに規定することも検討】
感染リスクの軽減を目的にして始めてみたテレワークという働き方が、従業員からも歓迎され、会社としても効果を実感し、きちんとした規定として確立したいという要望も一部で生まれています。テレワーク規定を作成する際は、次の諸点をよく検討して臨む必要があります。
① テレワークの目的を明確にする
○感染防止が目的なのか、育児介護等との両立が目的なのか、もっとジョブ型(仕事の内容)での勤務制度として考えるのか
② テレワークの形態を明確にする
○自宅限定か、自宅以外も可とするのか
○対象者は、会社が決めるのか、希望者で決めるのか、非正規雇用者も対象か
○業務遂行は手元のパソコンから会社にアクセスするのか、会社が支給するのか
③ 労働時間の管理をどうするのか
○「事業場外みなし」とし、厳密な具体的指示を行わない(労働者がある程度自由に席から離れることができる形態)とするのか、随時具体的指示を行う形態か
○労働時間の把握の仕方は、労働者からの自主申告によるのか、細かく管理するのか
④ 業務量の示し方はどうするのか
⑤ 通勤手当、費用補助(光熱費・通信費等)をどうするか
⑥ トラブル、メンタルヘルスの対応、相談窓口等をどうするか
⑦ 在宅勤務の中止規定
テレワークを開始するためには、これらをあらかじめ決めておいた方がいいでしょう。