労使トラブル110番

休業させた場合の割増賃金の対象は?



Q
新型コロナウイルスの影響で売り上げダウンとなり、交代で従業員を休業させて対応しています。
もちろん休業した日については休業手当を支払っています。
それでも例外的に残業が発生することがあります。
この場合、残業時間となるのはどの時間となるのでしょうか。
ちなみに弊社は、通常の労働時間制度で働く者と、フレックスタイム制で働く者と両方います。



A

【法定時間外か所定時間外か】


まず就業規則(賃金規程)における割増賃金の規定が、「法定時間外(法定休日)に対して支払う」となっているのか、「所定時間外(所定休日)に対して支払う」となっているのかを確認してください。

「法定時間外(法定休日)に対して支払う」と規定している場合は、実労働時間(実際に働いた時間)が法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えた時間、あるいは法定休日(週1日の休日)の労働時間が割増賃金の対象となると考えていいでしょう。
例えば、週2日休業させ、週4日就労させたとして、1日8時間労働だとすると、その週は32時間労働ですから割増賃金は発生しません。
1日単位では、仮に2時間の時短で、7時間就労させた場合、実労働時間は7時間ですから、割増賃金は発生しません。

一方、「所定時間外(所定休日)に対して支払う」と規定している場合は、あくまでも所定の始業・終業時間を超えた時間、あるいは所定の休日の労働時間が割増賃金の対象となります。先ほどの例ですと、週2日休業、週4日就労で、1日8時間労働だとすると、たしかに時間外労働は発生していませんが、所定休日労働は発生したことになります。また、1日2時間時短で、7時間労働だとすると、所定の終業時間を超えた時間は所定時間外労働となります。


【フレックスタイム制の時間外は】


フレックスタイム制の適用者の時間外労働はどう考えればいいのでしょうか。

一般的には、休業させるという措置はあくまでも使用者による指示であり、労働者の責による休業ではありません。そう考えると、総労働時間数から「標準労働時間×休業日数」を控除した時間数が契約時間数と考えるべきでしょう。

例えば、次の月の例で考えてみます。
 〇所定労働時間数:160時間
 〇休業を指示した日数:6日間
(標準労働時間7.5時間×6日間=45時間)
 〇総労働時間:120時間


この場合、①総労働時間数(120時間)は所定労働時間数(160時間)を下回っているのだから、時間外手当は発生しないと考えるのか、それとも②休業を指示した日数は当初の所定労働時間に含めず、120時間-(160時間-45時間)=5時間分の時間外手当を支払わなければならないと考えるのかです。

少なくとも就業規則で「所定時間外に対して割増賃金を支払う」と規定していた場合は、後者(②)の5時間分の残業が発生すると考えるのが正当でしょう。

一方、「法定時間外に対して割増賃金を支払う」と規定していたとしても、休業が使用者の指示に基づくものであるという性格から考えると、少なくとも労使協定なり、就業規則なりで、きちんと定めを置いて対応した方が納得を得られると思います。単純に実労働時間が所定労働時間数を超えていないから割増賃金は発生しないとしてしまうのには疑問が残ります。


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