労使トラブル110番

ホテルフロント業務に対する是正勧告



Q
ホテルのフロント業務に就く者が4名ほどおり(清掃その他の業務は委託会社から派遣)、この度労働基準監督署から呼び出し調査がありました。
フロント従業員は、15時出勤、翌日11時退勤(途中1時間休憩と仮眠休憩6時間、計7時間休憩)の勤務で、週2~3日の勤務という形態です。
初めての監督署の調査なので、どこから対策を打っていいのやらわかりません。



A

【法定書類の整備から始める】


監督署の調査では、必ず法定書類の整備状況の確認から始めます。
通常以下の書類を持参して出頭を指示するということになります。

① 就業規則 
② タイムカード・出勤簿(6か月分) 
③ 労使協定(36協定、変形労働時間制の協定等) 
④ 賃金台帳(6か月分) 
⑤ 健康診断個人票 
⑥ 労働条件通知書 
⑦ その他

したがって、これらの書類があるものは持参し、なければ最大限作成しはじめ、提出することになります。
一つひとつの書類のポイントを整理しておきます。

<就業規則>
労働基準法では、常時使用する従業員が10人以上の事業場では就業規則を作成し、監督署に届け出なければならないとされています。
なお、10人未満の事業所は就業規則に準ずるものを作成するのが望ましいとはされていますが、義務とはされていません。

<健康診断個人票>
健康診断は社会保険加入者については年1回以上の実施が義務付けられています。
また、深夜労働が6ヵ月に24回(1ヵ月4回)ある事業場は、年2回の特定健診が義務付けられています。
健康診断の記録を管理する必要があります。

<労働条件通知書>
雇用する際、労働条件を明示したものを書面で交付する義務があります。
労働条件通知書とか雇用契約書など形態はさまざまですが、絶対的明示事項(必ず明示しなければならない事項)がありそれを全部記載しなければなりません。
それは、「労働契約の期間(期間の定めのあり、なし。ある場合は契約更新の条件も含めて)」、「就業の場所・従事する業務」、「始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、就業時転換」、「賃金の決定・計算・支払の方法、賃金の締切り・支払の時期、昇給」、「退職(解雇の事由を含む)」です。


【労働時間の適正な把握】


<タイムカード・出勤簿>
平成29年1月20日付の通達「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に基づき指導が強化されている点です。
そこでは、労働時間を適正に把握する原則的な方法は「使用者が自ら現認することにより確認すること」か、「タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること」の2つのいずれかであることとし、「やむを得ず自己申告制で労働時間を把握する場合」はその運用についての細かい条件が付されています。

貴社のフロント業務の場合、21時間拘束で7時間の休憩をはさむという勤務形態ですから使用者による現認を100%行うのは無理があるように思われます。
したがって、タイムカード方式で把握するか、それとも一定の時間帯(休憩の入り・明けの時間など)に限って自己申告方式を採用するということになるでしょう。
自己申告方式をとる場合には、実態との乖離がないかどうかをチェックされますので、監督署に一定期間にわたって報告することが義務付けられる可能性がありますので覚悟しておいた方がよいでしょう。

<賃金台帳>
労働時間を適正に把握した結果を記入し、賃金計算した結果を記入するのが賃金台帳です。
賃金台帳には、賃金の計算期間、労働日数、労働時間数、時間外労働・休日労働・深夜労働の時間数、基本給・手当・その他賃金額、賃金の一部を控除した場合の額、これらの法定事項を記載しなければなりません。
賃金の支払い額だけを記載したものは賃金台帳とみなされません。


【労使協定】


労使協定の中で必ず必要で、かつ、届出なければならないのは時間外・休日労働の協定(いわゆる36協定)です。
たとえわずかでも残業や休日労働がある場合には、この協定を提出しなければ罰則が付きます。

また、貴社の場合は、1日14時間労働という変則勤務ですから、1か月単位の変形労働時間制の労使協定が必要です。
この協定がないと、そもそも変則勤務が許されないことになりますし、また毎回の勤務ごとに6時間分の残業代を支払わなければならないことにもなります。




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