労使トラブル110番
休日数を増やさないと若者は採用できない
Q
電気工事を中心とする建設業です。
いままでは2,3月と12月が繁忙期だったので、1年単位の変形労働時間制を導入し、休日日数は法律上ギリギリの年間85日(うるう年は86日)でカレンダーを作成してきました。
最近仕事が増えて年中繁忙となったため1年変形制が実態に合わなくなってきました。
また、ハローワークに求人票を出したところ、ハローワークから「こんな休日数では若者はまず採用できませんよ」と指摘されました。
どう対応したらいいのか、アドバイスをお願いします。
A
ワークライフバランス志向を強める若者
ここ数年、若者のワークライフバランス志向が急速に強まっています。
日本生産性本部が新入社員を多少に行った「働く目的」に関する意識調査の結果を紹介します。
「楽しい生活をしたい」「経済的に豊かになる」と答える若者が増える一方です。
ハローワークの「休日数を増やさないと若者は採用できない」という指摘も理があります。
週休2日制に移行する覚悟
建設業とくに下請の場合、一般の企業と違って曜日を固定して週休2日にする(例えば土曜・日曜休日)のは非現実的です。
また、1日の所定労働時間を7時間以内に抑えて週40時間以内に設定するというのも無理があります。
そうすると法定労働時間内に所定労働時間を収めるためには、各人別のシフト制によって週休2日制としていくしかありません。
例えば、日曜日を休日とし、もう1日の休日をシフトで一人ひとり(あるいはグループごとに)決めるやり方です。
さまざまな工夫をしている例
建設業でも所定労働時間を法定労働時間の枠内に収めるためにさまざまな工夫をしているところがあります。
ある会社では、正社員の勤務時間を短縮するために、20人程度のアルバイトを組織しています。
会社近くの劇団の青年たちは、公演期間以外の期間はアルバイトをしています。
彼らにあらかじめアルバイトをできる日を提出してもらい、マッチングした日に働いてもらうというやり方です。
中にはその中から正職員に雇用する例もあるそうです。
別の会社では、当初、遠い現場に出かけるため会社の車に乗り合わせ、帰りも会社の車で帰社する形態でした。
その結果、勤務時間が長くなってしまうという悩みがありました。
そこで、帰りの移動方法は自由にし帰社して報告する義務をなくしました。
前日の業務報告は翌日の朝に行うという業務改善を図り、残業時間はかなり削減できました。
また、もともと下請の業務は元請からの無理な注文に応えなければならないため長時間労働になりがちです。
仕事を地域中心に自前で受注できるスタイルに徐々に変えることによって労働時間の大幅削減に成功している例もあります。
こうした例に積極的に学ぶことも大切です。
若者の採用の独自の努力
労働時間の削減や休日日数を増やすという努力とともに、若者採用にはもう一歩の独自努力が必要です。いくつかの視点を提案します。
(1)給与体系の見直し
建設業は日当制(日給制)を採用している会社が多いです。
これはもともとの成り立ちが、職人さんを「日当いくら」という形で雇うという形態から始まった歴史の名残りもあろうかと思います。
また、実際日給制にすることによって“休まず働いてくれる”という会社にとって都合のいい体系となっているという面もあります。
しかし、若者にとって日給制はなじみづらい面があります。決まった給与がまず保障され、残業があれば残業代もきちんと支払ってくれるという給与形態を望んでいる人が多いのです。
日給制を残したとしても、若者に対しては月給制を採用するという給与体系を採用することも検討した方がよいでしょう。
(2)リフレッシュ休暇などの設定
週休2日制と年次有給休暇は決まった休日として保証されますが、併せて年末年始・夏季休暇、冠婚葬祭などの特別休暇、さらに一定の勤続年数に達すればリフレッシュ休暇があるなどの魅力ある休日制度も検討します。
(3)退職金制度の設置
建退共や中退共など無理のない形で退職金制度を設けることも若者にとっては魅力となります。