労使トラブル110番

有給休暇の際に支払う賃金は、通常の賃金か、平均賃金か?



Q
 弊社の従業員の中には、業務内容により、月給制の者、時給制の者、日給制の者などさまざま存在します。
いままで就業規則では「年次有給休暇を取得した際は通常の賃金を支払う」とだけ規定していたのですが、日給制の者の中で、「同じ日給額をもらえるのなら所定労働時間の有給休暇を取る日は所定労働時間の短い日ではなく、長い日に取った方が得だ」と考える者が生まれてきました。
何かいい知恵はないものでしょうか。



A

年次有給休暇の賃金に関する法の規定は


労働基準法39条第7項は、年次有給休暇を取得した日または時間(※)に支払う賃金は、
①平均賃金、
②所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金、
③健康保険の標準報酬日額(但し、労使協定を締結することが要件)
のいずれかを選択し、「就業規則その他これに準ずるもので定め」なければならないとされています。

 (※)時間単位の年次有給休暇制度を実施するためには、労使協定の締結が必要です。


「通常の賃金で支払う」場合の計算方法と簡素化


 貴社のように「通常の賃金を支払う」と定めた場合、有給休暇1日分の金額の計算方法は、次のようになります。
 ●月給制:月給額÷その月の所定労働日数
 ●時給制:時給額×所定労働時間数
 ●日給制:日給額
 ●出来高制:(賃金総額÷総労働時間数)×1日平均所定労働時間数

なお、賃金制度が上記の形態の2つ以上によって構成される場合には、それぞれ計算した金額の合計額となります。
例えば月給制で、かつ、出来高制も併せた賃金制度になっている場合、月給制の計算と出来高制の計算をそれぞれ行い、合算するということです。

以上の原則的計算方法をとらずとも、簡素化の趣旨から、通常の出勤したものと扱ってよいとされています。
行政解釈は、「日給者、月給者等につき通常の賃金を支払う場合には、通常の出勤をしたものとして取り扱えば足り、(上記のような)計算をその都度行う必要はない」とし、そこには「臨時に支払われる賃金や割増賃金…は、算入されない」としているのです(昭和27.9.20基発675号)。

また、変形労働時間制を採用している場合の時給制の従業員については、「各日の所定労働時間に応じて算定される」とされ、フレックスタイム制の場合は標準労働時間労働したものとみなして算定するとされています。


平均賃金で支払う場合


一方、日給制で、日によって所定労働時間が違う場合(ある日の所定労働時間は8時間だが、別の日は3時間であるようなケース)、「通常の賃金を支払う」という規定では矛盾が生まれます(所定労働時間が長い日のみ有休を取得するなど)。
それを避けるためには平均賃金で支払うとした方がいいでしょう。

平均賃金の計算は、労働基準法12条の定めに基づき、直前3ヶ月間に支払われた賃金総額を総日数で除した額となります。
その際、家族手当や通勤手当なども含まれることになりますから、有給休暇を取得した月にもこれらの手当を全額支払うと二重払いとなるという問題が生じます。
通達では、「(それらの手当の)1日あたりの額を差し引いた額を支給すればよい」(昭和23.4.20基発628号)としています。
もちろん二重払いしても差し支えありません。


健康保険の標準報酬日額を支払う場合


標準報酬日額とは、標準報酬月額の30分の1の額のことです。
不定形な勤務形態のような場合にこの額を支払うとしたほうが合理的となることがあります。
ただ、社会保険未加入者には採用できません。
また、この方式を採用する場合には労使協定の締結が要件となります(届出義務はありません)。


時間単位の有給休暇で支払う賃金は


時間単位で有給休暇を取得した場合も、通常の賃金、平均賃金、標準報酬日額のいずれを採用するのかは、1日単位の取得した際の賃金の基準と同じものでなければなりません(1日単位では通常の賃金を基準としながら、時間単位では平均賃金を基準とすることはできません)。
そして、採用した基準の額を、その日の所定労働時間数で除した額の賃金を支払うことになります。

それぞれの勤務形態を踏まえ、実態に合った基準をご検討ください。



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