労使トラブル110番
私傷病休職における休職期間は固定した期間とすべきか、その都度決めるべきか?
Q
メンタルの病(適応障害)で欠勤が続いている者がいます。
弊社の就業規則においては、私傷病の場合「欠勤が3ヵ月続いた場合、休職とする」、休職期間は、勤続年数に応じて、「最長1年」とか、「最長3年」としています。
ご本人の勤続年数からすると3年の休職期間となるのでしょうか?
給与負担や退職金負担との兼ね合いもあるので、ご意見をお聞かせください。
A
【休職制度の法的意味】
もともと休職制度は法律上の根拠がある制度ではありません。
ただし、休職制度を就業規則で設けている会社は少なくありません。
長い職業人生の中では、従業員本人が病気になったり、ご家族の病気や介護などの諸事情が生まれることも少なくありません。
働くことが不可能であれば、法律上は、普通解雇事由となります。
ただ、これらの人をすべて解雇してしまっては、人材の確保に困難が生じたり、一人ひとりの従業員も安心して働くことができませんから、休職期間というのを設けて病状の回復等を待つとしているわけです。
休職制度とは解雇を猶予するための制度として会社が任意に設けている制度です。
本来、休職させるかどうかは会社が命ずるものであり、労働者の権利ではないのです。
もちろん就業規則で、労働者の権利として保証すると規定していれば、労働者の権利となりますが、本来的な意味はそうではありません。
【私傷病によって休職事由と休職期間は違ってくる】
では休職させるかどうかの判断及び休職期間の適切な設定はどうあるべきでしょうか。
一言で言えば、私傷病によって千差万別だということです。
(1)まず休職させるかどうかの判断事由ですが、就業規則で「欠勤が1ヵ月を超えたとき休職させる」という規定のところがありますが、必ずしも「連続欠勤1ヵ月」と固定する必要はありません。
メンタルの病気の場合、出勤と欠勤を繰り返すような例が多く、その場合はいち早く休職させて治療に専念させた方が回復も早いと言われています。
こうしたケースに対応できるように、休職の要件を「欠勤が1ヵ月続いたとき」だけにしないで、「連続又は断続して」とか、「通常の労務提供ができないとき」なども休職事由として規定しておくことによって柔軟な対応が可能となります。
(2)次に休職期間についてですが、これも病気によって違います。
例えば、ガンを患った場合を考えてみると、ガンの発生部位とステージによって変わってきます。
初期のガンで手術をすれば数カ月で復帰できる場合もあれば、抗がん剤治療等の場合には必ずしも休職とせず一定期間制限勤務とした方がいいということもあるでしょう。
また、末期がんで、ご本人やご家族の意向も早期退職を望み、退職金で治療費を工面したいという希望を持っておられるケースもあります。
最近増えているメンタルの病気でも、一番多いうつ病の場合、軽いうつ病であれば数ヶ月間の休職を経れば徐々に復帰できるケースが多く、逆に数年の休職が必要なケースもあります。
ご相談の適応障害であれば、特定の原因や職場環境が原因で発生する病気ですから、特定の原因や職場環境が変われば元気に復職できる例が多いと言われています。
これらの一つひとつの休職期間の設定は、主治医や産業医の意見をもとに、その都度判断し、必要に応じて休職期間を短縮あるいは延長も行うのが適切と思います。
【休職期間は上限期間とすべき】
以上から、就業規則における休職期間の設定は、「勤続〇年=休職期間〇年」などと固定した規定にするのではなく、「勤続〇年=休職期間の上限〇年」などと幅を持たせ、その上限期間の範囲内で会社がその都度「休職期間を定める」とした方が良いでしょう。
私傷病の種類と今日の医療技術の進歩などを踏まえて、規定の見直しを図ってください