労使トラブル110番

2暦日にわたる労働の残業代計算の仕方



Q
1箇月単位の変形労働時間制を採用している医療機関です。
看護師は3交替勤務制(日勤・準夜勤務・深夜勤務)ですが、ある従業員が、準夜(終業時間は午前0時)勤務でしたが、午前0時を30分ほど超えて勤務した日がありました。
翌日が休日だったのですが、事業所は時間外割増(1.25)+深夜割増(0.25)、合計1.5倍の割増賃金を支払いました。
本人から、休日に食い込んで働いた時間分は、「休日割増分1.35+深夜割増分0.25で、合計1.6倍ではないか」という意見が出されました。
どのように考えたらいいのでしょうか?


(なお厳密にいえば、「1.25」は法律上は「1.25倍以上」、「1.35」は「1.35倍以上」、「0.25」は「0.25倍以上」のことを指しますが、「倍以上」はここでは略して書きます。)




A

2暦日にわたる労働の労働時間のカウント


午前0時を超えて2暦日にわたる労働をした場合、その超えた分の労働時間は「暦の日が変わったのだから、別の日の新たな労働と見るのでしょうか、それとも前日の労働の延長ととらえるのでしょうか。
 
厚労省は、通達で、2暦日にまたがって継続勤務が行われる場合は、「1勤務日として、勤務の全体が始業時間の属する日の労働と取り扱われる」(昭和63・1・1基発1号)としています。

ご質問のケースの場合、1箇月単位の変形労働時間制ですから、その日の終業時間であった午前0時を超える時間は、前日の労働の延長としてとらえ、時間外労働として割増賃金1.25倍の対象となります。
さらに深夜割増の対象にもなりますから「1.25+0.25=1.5倍」の割増賃金の支払いとなります。

もし時間外労働が翌日の所定労働時間に及んだ場合には、その「翌日の所定労働時間の始期までの超過時間に対して…割増賃金を支払」わなければなりません(昭和63.3.14基発第150号)。


法定休日と所定休日


次に、平日の時間外労働が引き続き翌日の休日に及んだ場合の扱いです。もちろん休日に及んだ労働も1勤務として取り扱い、割増賃金の対象となることに違いはありません。
問題は割増率が「1.25+0.25」なのか、「1.35+0.25」なのかです。

まず検討する必要があるのは、その休日が法定休日なのか、所定休日なのかということです。
労働基準法第35条は、休日について「毎週少なくとも、1回の休日(変形休日制の場合は、4週間を通じて4日以上の休日)」を与えなければならないとしています。
この「毎週1日(もしくは4週4日)」の休日のことを法定休日と言います。これ以外の休日は所定休日のことです。

週休2日制の会社、例えば土曜日と日曜日を休日としている場合、日曜日に勤務したとしても土曜日に休日が与えられていれば、法定休日は確保されたことになりますので、日曜日の労働は法定休日労働とはなりません。
ところが、日曜日も勤務した上に土曜日も勤務したとするならば、週1日の休日が与えられないことになるので、土曜日の労働は法定休日労働となります
(なお、1週間とは、就業規則で特別の定めがない限り、法律上、日曜日から土曜日までのことです。休日が2日とも勤務の場合最後の休日である土曜日が法定休日労働となります)。

また、会社によっては、就業規則で「日曜日を法定休日とする」と法定休日を特定しているところがあります。
就業規則で法定休日を特定している場合は、その特定した日が法定休日となり、それ以外の休日は所定休日となります。


法定休日と所定休日では割増率が違う


平日の時間外労働が引き続き翌日の法定休日に及び、法定休日労働をさせる場合にも1勤務日として扱いますが、割増賃金の支払い方としては法定休日に支払う割増賃金率はあくまでも暦日単位で支払うものであることから、法定休日の午前0時以降は「1.35」の割増賃金を支払わなければなりません。
これに深夜割増の「0.25」が加算されますので、「1.6」となります。

なお、逆に法定休日労働が引き続き翌日の平日に及んだ場合には、平日の午前0時以降については、「1.35」ではなく「1.25」の割増率で済みます。
(以上、厚生労働省労働基準局編『労働基準法』より引用)。

ちなみに、以上はあくまで労働基準法上の扱いで、就業規則により、所定休日も含め休日労働は全て「1.35」の割増率と定めた場合には、就業規則の定めに従うことになり、したがって、「1.35+0.25=1.6」倍の割増率となります。




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