労使トラブル110番

会社倒産時の労働者の生活保障はどういう制度があるのか?



Q
営業不振で近く倒産(特別清算)する方向で弁護士と相談しております。
従業員の給与も間もなく支払うことができなくなり、退職金制度に基づく支給もできません。
大変心苦しく、せめて何らかの従業員の生活保障をする制度があればと思うのですが…。


A


未払賃金立替払制度

 
企業倒産により賃金が支払われないまま退職した労働者に対して、未払賃金の一部を立替払する制度があります。
これは企業が毎年納付している労働保険料を財源とするもので、全国の労働基準監督署及び独立行政法人労働者健康安全機構で実施している制度です。
まず要件です。

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〔要件〕
(1)使用者側の要件
 ① 1年以上事業活動を行っていたこと
 ② 倒産したこと
   倒産は次の2つの場合です。
   ㋑法律上の倒産:
    破産、特別清算、民事再生、会社更生
    破産管財人等に倒産の事実等を証明してもらう必要があります
(用紙は労働基準監督署に備え付けてあります)
   ㋺事実上の倒産:
    中小企業について、事業活動が停止し、再開する見込みがなく、賃金支払能力がない場合(労働基準監督署の認定が必要なので認定の申請をする必要があります)

(2)労働者側の要件
倒産の日(裁判所等への申立て等の日又は監督署への認定申請日)の6ヵ月前の日から2年の間に退職した者

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 以上の要件を満たした場合、次に労働者が請求できる範囲、請求手続についてです。

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〔請求できる範囲と手続〕
(1)対象となる未払賃金
労働者が退職した日の6ヵ月前から立替払請求日の前日までに支払期日が到来している定期賃金と退職手当のうち、未払となっているもの(賞与は立替払の対象となりません。また、未払賃金の総額が2万円未満の場合も対象外です)

(2)立替払する額
未払賃金(定期賃金と退職手当)の8割。但し、退職時の年齢に応じて88万円~296万円の範囲の上限がある)

(3)請求できる期限
倒産の日(事実上の倒産を含む)から2年以内

(4)窓口:事業所を管轄する労働基準監督署

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この制度は、独立行政法人労働者健康安全機構が、立替払した額の賃金債権を代位取得する制度ですから、機構は本来の支払責任者である使用者に求償することとなります
(もちろん使用者が倒産と同時に自己破産している場合には機構からの請求を支払うことはできません)。

雇用保険からの基本手当

 
また、雇用保険の基本手当(失業給付)も受給することができます。
倒産による失業ですから、特定受給資格者(いわゆる会社都合扱い)となりますので、
離職した日の直前6ヵ月の賃金(賞与を除く)の合計を180で割って算出した額(賃金日額)のおよそ50~80%の範囲内(賃金が低い方が支給率が高くなる)で支給されます。

但し、基本手当日額は年齢区分ごとにその上限額が定められています(以下の表)。

30歳未満 6,750円
30歳以上45歳未満 7,495円
45歳以上60歳未満 8,250円
60歳以上65歳未満 7,083円

  
   (平成30年8月1日現在)
   
所定給付日数は、年齢区分ごとに、雇用保険被保険者期間ごとに、次の表の日数です。




なお、基本手当の受給はそれぞれの労働者が居住する地域の管轄のハローワークで手続します。
失業してから7日間は待期期間、待期期間終了後28日ごとに失業の認定を受けて支給されることとなります。
ハローワーク出頭後1ヵ月以上経過後に第1回目が支給されますので、なるべく早めに最寄りのハローワークに出頭した方がいいでしょう。
未払賃金の立替払も雇用保険の基本手当のいずれも労働者自身が手続することとなりますので、従業員によく説明して間違いのないようにしてください。

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