労使トラブル110番
欠勤しがちな従業員を解雇したいのですが…
Q
採用後数か月勤務していたのですが、欠勤しがちな従業員がいます。
最近は欠勤が続いているので「解雇したい」と従業員に話したところ、「出勤するつもりはあるのですが体調がすぐれない」と言っており、同居するご家族の方からは「解雇するなら裁判します」と連絡がきました。
弊社には就業規則がなくこうした場合の対応のルールが決まっていません。
一体どのように対応したらよいものでしょうか。
A
就業規則の整備は不可欠
就業規則がないとこうした場合の対応に困ります。
例えば、解雇する場合でも就業規則に解雇事由が明記してあれば正当な解雇とみなされる場合でも、就業規則がないと根拠のない解雇とみなされる可能性があります。
また、病気による欠勤の場合、「連続または断続して欠勤が●ヵ月続くときは休職させる」というような休職制度があれば、速やかに休職させ、治療に専念させるというような対応も取ることができます。
就業規則とは会社運営の基本的ルールですから、ルールがないとどうしてもケースバイケースの対応になってしまい、過去の対応との整合性がなくなってしまったりしますので、これを契機に整備されることをお勧めします。
まず医師の診断書の提出を求めてください
「体調がすぐれない」と言っておられるようですが、それが病気によるものなのか、欠勤の言い訳として言っているのか判断ができません。
病気による欠勤であれば、一定期間休ませて治療に専念させた方がいい場合もあります。
したがって、その正確な判断をするために、医師の診断書の提出を求め、それによって対応を検討することが大事でしょう。
一般に休職制度とは解雇猶予措置という法律的性格を持っています。
私傷病で出勤できず、就労に適さないと判断したときは普通解雇の理由として成り立ちはするのですが、多くの企業では休職制度を設けて、解雇を猶予し、治療等に専念してもらい、復職するチャンスを与えるようにしています。
ご家族が「裁判で争う」と言われているようですので、診断書の提出を待って、一定の猶予期間を確保することはあってもおかしくないと思います。
解雇を検討する場合は、手順を踏まえること
解雇を検討することとした場合、いきなり解雇するというのは争いとなるリスクもありますからなるべく避けた方が良いでしょう。
普通解雇の有効性を判断する上で、東京地裁の労働事件裁判官であった者らが書いた『労働事件審理ノート』(判例タイムズ社)で次のような記述をしており参考になります。
A 勤務成績、勤務態度等が不良で職務を行う能力や適格性を欠いている場合か
当該企業の種類、規模、勤務内容、労働者の採用理由(職務に要求される能力、勤務態度がどの程度か)、勤務成績、勤務態度の不良の程度(企業の業務遂行に支障を生じ、解雇しなければならないほどに高いかどうか)、その回数(1回の過誤か、繰り返すものか)、改善の余地があるか、会社の指導があったか(注意・警告をしたり、反省の機会を与えたりしたか)、他の労働者との取扱いに不均衡はないかなどを総合検討することになる。(26ページ。下線は筆者)
下線部分にあるように、労働者に「改善の余地」を与えること、「会社の指導」(注意・警告、反省の機会の付与)の有無が問われることになります。
具体的には、
①まず一定の期限を設けて診断書の提出の義務付け、
②診断書による病気の有無、記載内容に基づく措置(治療専念期間の設定、又は病気でない場合は直ちに出勤することの要請など)、
③毎日必ず会社に連絡することなどを義務付ける指導を文書で発行し保存しておくこと
などを実情に即して行うことです。
これらの措置、指導を行ってもなお会社の指示に従わず、欠勤が続くようであれば、それは自ら退職の意思を表示したものとみなさざるを得ず、会社としてはそのように判断し退職させざるを得ない旨を通知すべきでしょう。