労使トラブル110番
有期雇用者の離職理由をめぐるトラブルと留意点
Q
平成26年から半年単位で契約更新していたアルバイトがいます。
今期の契約期間は9月末までだったのですが、契約期間途中の6月に退職したいと申し出てきました。
アルバイトをしながら勉強していた国家資格試験の一次が合格したので二次試験に専念したいと同僚にその理由を言っていたのですが、
会社に対しては
「途中で勤務場所と勤務時間が変更されストレスがたまった。したがって会社都合による離職だ」と主張しています。
勤務時間を途中で変更したのは、人間関係のトラブルがあったため、本人の意向を踏まえて同意の上で行った措置です。
会社としては自己都合退職で離職証明書を発行しようと考えていますが…。
A
離職理由の判定はハローワークが行う
通常離職証明書は、会社が離職理由及びその具体的事情を記入し、離職者がそれを確認し、署名・押印し、ハローワークに提出します。
ところが会社と離職者との間で離職理由を合意できない場合、本人の署名・押印は得られないままハローワークに提出することとなり、
一方離職者は、ハローワークで「会社が言っている離職理由とは違う」と主張することがあります。
この場合、ハローワークは、離職理由の食い違いについて、会社に事実を確認できる文書、書類等の提出を求めてきます。
そして最終的にはハローワークが離職理由を判断することとなります。
労働条件の変更の際は雇用契約書を結び直す
お話をお伺いする限りでは本人都合による離職と思われます。
但し、契約当初とは違う勤務場所や勤務時間になった点について、雇用契約書を取り交わしておられるのでしょうか。
そもそも有期雇用の場合、契約更新の都度雇用契約書を取り交わす手続きが必要です。
そうでなければ、実質的に期間の定めのない契約に転化しているとみなされてしまう可能性もあります。
この点で、場合によってはハローワークが会社都合による離職と判断する可能性もあり得ると思います。今後の教訓としてください。
労働契約法第18条をめぐるトラブルへの対応
有期雇用をめぐって、この間、労働契約法第18条に関するトラブルが頻発しています。
労働契約法第18条とは、平成25年4月1日以降に締結又は更新した有期雇用契約が、更新の結果5年を超えるに至った場合において、労働者には無期雇用に転換することを申し込む権利が発生し、労働者がその権利を行使した場合、使用者はそれを承諾したものとみなすというものです。
5年を超えるとは、平成30年4月以降の更新時のことです。
法に従って無期雇用転換を認めて雇用し続けている会社が多いのですが、
なかには当初の契約にはなった契約期間や更新回数の上限を新たに設けたり、上限を短縮するなどにより5年を超える前に雇止めするところも少なくないのです。
こうした問題に対応するため、雇用保険法施行規則第7条が改正され、平成30年3月30日付で施行されました。
この改正以前にも次のような規定がありました。
「期間の定めがある労働契約が1回以上更新され、雇用された時点から継続して3年以上雇用されている」場合であって、かつ、「労働契約の更新を労働者が希望していたにもかかわらず、契約更新がなされなかった」場合、特定受給資格者に該当する(いわゆる会社都合により離職として扱う)。
今回の改正はこの部分をさらに踏み込み、次のような項目が追加され、「上限新設」「上限短縮」等による離職の場合も特定受給資格者として扱うとされています。
<記入項目>
・1回の契約期間の月数、通算契約期間の月数、契約更新回数
<選択項目>
・当初の契約締結後に契約期間や更新回数の上限を短縮し、その上限到来による離職に該当「する」「しない」
・当初の契約締結後に契約期間や更新回数の上限を設け、その上限到来による離職に該当「する」「しない」
・定年後の再雇用時にあらかじめ定められた雇用期限到来による離職で「ある」「ない」
・4年6箇月以上5年以下の通算契約期間上限が定められ、この上限到来による離職で「ある」「ない」
→「ある」場合 同一事業所の有期雇用労働者に一様に4年6箇月以上5年以下の通算契約期間の上限が平成24年8月10日以前から定められて「いた」「いなかった」
有期労働契約を締結する際には、通算契約期間の上限を設けるのか設けないのかなど細部にわたって決めておくことが重要です。