労使トラブル110番
業務によって単価が違う場合の割増賃金の計算
Q
介護事業所の登録ヘルパーさんの残業代計算の仕方について、2つの点でわからないことがあります。
1つ目は、移動時間についてです。「自宅→Aさん宅→Bさん宅→自宅」と移動する場合、自宅と利用者宅間の移動と、利用者宅間の移動の2種類があります。
これは両方とも労働時間としてカウントしなければならないのでしょうか?
2つ目は、弊社では、生活援助をしている時間の単価は1時間あたり1,400円、身体介護をしている場合は1時間あたり1,600円となっています。
仮にその日の労働時間が8時間を超えた場合、業務内容によって割増単価を変える計算をするのか、「平均賃金×超過時間×割増率」で計算するのでしょうか?
A
移動時間は労働時間
介護ヘルパーさんの移動時間については、直接的には介護報酬の対象時間となっていないため、賃金を支払っていないケースも見られます。
しかし、移動時間は使用者の指示命令により、事業場、集合場所、利用者宅の相互間を移動する時間(ただし、「自宅⇔利用者宅」「自宅⇔事業所」は通勤時間になります)は、原則として労働時間に該当します。
もちろん移動中といえども、移動時間中の自由利用が労働者に保障されている場合(たとえば利用者宅での業務開始までの時間が2時間空いていて、その間に買い物に行く等の自由利用が可能であるような場合)はその時間については労働時間とはいえません。
移動時間についての賃金は最低賃金に違反しない範囲で介護時間とは違った賃金とすることはかまいません。
業務内容で単価が違う場合の割増賃金
次に、業務内容が違う場合の割増賃金の計算についてです。
業務内容によって単価が違うケースは夜警業務などでもよく見られます。
夕方から翌朝までの業務で、たとえば夜10時までの単価と比べて仮眠時間(ただし電話等の対応が求められるため労働時間とみなされる時間)の単価がより低く設定されるような場合です。
この場合、法定労働時間を超える時間帯の割増率を乗じるべき「通常の労働時間の賃金」が、
①起きて活動している時間に支払われるべき基本給等なのか、
②仮眠時間に支払われる宿泊手当なのか、という問題です。
ご質問のケースでは、身体介護の時間の時給(1,600円)と生活援助の時間の時給(1,400円)は別々で、さらに移動時間に対しても別の時給単価を設定することになります。
つまり労働密度や負担度などを考慮した時給設定を行っているわけですから、割増単価も法定労働時間を超過した時間が身体介護の時間なのか、生活援助の時間なのか、移動時間なのかによって、それぞれの時給単価で計算することでかまいません。
もちろん平均賃金を算出して、平均賃金の1時間あたりの単価に割増率を乗じるやり方でも問題になるわけではありません。
いずれが正しいやり方なのか、裁判例でもまだ確たる結論が出ていないテーマです。