労使トラブル110番

雨のため現場作業がなくなったときの休業手当支払い義務


Q
建設業者です。雨天のため現場での作業ができないため休日とせざるを得ない場合が多く、給与もその際は出さない(欠勤と同じ扱い)ようにしていたのですが、休業手当を支払ってくれと従業員から言われました。


A

休業手当とは

 
労働基準法26条では、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の休業手当を支払わなければならない」と定めています。
これと似たような規定が民法536条の2「債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない」です。
 
民法の規定に従えば、労働者は100%の賃金請求ができるといえますが、民法の規定は任意規定であるため合意により異なる定めをすることができ、労使で合意すれば0%とすることも可能です。
これに対して労働基準法26条は強行規定であり、これ(100分の60以上)を下回る水準の合意をしても無効となります。
労働基準法の規定は、労働者の生活保障の趣旨に基づき、罰則及び付加金を通じて、使用者に平均賃金の6割の支払いを強制しているものといえます。
 
なお、平均賃金とは、労働基準法12条により、過去3ヵ月間に支払われた賃金総額を、3ヵ月間の総日数で除した額で計算するのが原則です。
請負制や日給制の場合は別の計算方法になりますので気を付けてください。

使用者の責に帰すべき事由とは

 
同条の「使用者の責に帰すべき事由」の範囲はどうなるのでしょうか。
文理上当然のことですが不可抗力となる事由は含まれないのですが、不可抗力であるかどうかの判断基準は非常に難しい問題です。
労働基準局では次のように解説しています。

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第一に、その原因が事業の外部より発生した事故であること(性質的要素につき客観的)、
第二に、事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてなお避けることのできない事故であること(量的要素につき主観説を加味)の二要件を備えたものでなければならないと解する。(労働基準法コンメンタール363㌻)
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具体例として、「親工場の経営難から下請工場が資材、資金の獲得ができず休業した場合に休業手当の支払い義務がある」とする一方、
「法令を遵守することによって生ずる休業」(健康診断の結果に基づいて休業させた場合、感染症法に基づく就労禁止の疾病に罹患した者を休業させた場合など)や、「天災地変その他の不可抗力」(東北大震災によって休業を余儀なくされた場合、天災地変による停電期間中など)の場合休業手当支払い義務はないとしています。
 
では「天災地変その他の不可抗力」の範囲ですが、例えば台風により工場が倒壊して使用不能になっているような場合は使用者の努力ではいかんともし難く不可抗力といえますが、雨天一般が自然現象だからといって一律に不可抗力といえるわけではありません。
個々のケースごとに使用者の帰責事由に該当するかどうかが判断されます。

休日振替によって対応するなど

 
建設業の場合は、休業手当支払い義務を免れることができないような雨天であっても現場作業は中止とせざるを得ないことがあります。
こうした場合は、休日の振替によって対応することも一つの方法です。休日振替とは、事前に、所定休日と所定就労日を交換することですから、会社は天気予報等に基づき少なくとも就労日の前日までに「●●日は雨が予想されるので休日とし、代わりに当初休日としていた●●日に作業することとします」と労働者に周知する必要があります。
 
なお休日振替の場合、週や月を越えて別の週や別の月に就労日を設定した結果、労働時間が法定労働時間を超えてしまうことになることがあります。
この場合、割増賃金の支払いが必要になりますので留意してください。  
もう一つの選択肢は屋外作業の代わりに屋内作業等の別の作業を命じ就労させることです。もちろんそういう作業があることが前提です。
 
以上から、
①休業手当を支払うか
②休日振替によって対応するか
③別作業を命じるか

3つの選択肢を想定した対応が必要で、一律に欠勤扱いとするのは正しくありません。


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