労使トラブル110番

是正勧告2題~健康診断と管理監督者問題


Q
小売業者です。ある地方の店舗で、労働基準監督署の立ち入り調査が行われ、健康診断の実施・記録の保存、タイムカード、賃金台帳などが調べられ、以下の是正勧告を受けました。

(1)健康診断について
①常時使用する労働者に対する雇い入れ時の健康診断を実施する
②深夜業に常時従事する労働者に対して、6ヵ月ごとに1回の健康診断を行っていない
③健康診断個人票を作成していない
(2)店長の管理監督者としての扱いについて
①店長は管理監督者に該当しないと思われる
②店長の時間外労働手当、休日労働手当の不足額を調査し、遡って支払う


質問ですが、「常時使用する労働者」にはパートやアルバイトも含まれるのでしょうか?
「深夜業に常時従事する労働者」の基準はあるのでしょうか?
健康診断個人票は店舗でも管理しなければならないのでしょうか?
店長が管理監督者でないとすれば、店長手当も残業代の計算対象となりますか?


A

健康診断の実務


①雇い入れ時の健康診断と実施対象者
労働安全衛生法は、事業主に、雇い入れ時及び年1回の定期健康診断を実施する義務を課し、実施しなければ罰金刑を科すとしています。「雇い入れ時」とは、採用前ではありません。かつて採用前に実施し、肝炎やHIV感染などを理由とした採用差別があったこともあり、採用前の健診ではだめだという扱いとなった経過があります。また、入社前の健康診断から3ヵ月を経過せずに雇い入れられた場合は、健康診断結果を証明する書面の提出で代えることができるとなっています(労働安全衛生則43条但書)が、これは中途採用者などに限られた扱いで、一般の採用で「健康診断書」を提出書類として義務付けることはできません。 健康診断の実施対象者の範囲は、正社員はもちろん、週当たり所定労働時間が正社員の4分の3以上のパート(無期契約パート、1年以上の契約期間のパートを含む)も対象となります(これ以下の所定労働時間のパートは「実施が望ましい」とされています。詳しくは厚生労働省のリーフレット参照)。

②「深夜業に常時従事する」の基準は?
深夜業を含む特定業務に従事する者に対しては6ヵ月以内に1回の健康診断を実施しなければなりません(安全衛生法第66条)。ところが法律上「常時従事する」という点について明確な基準は設けられていません。深夜時間帯(午後10時から午前5時まで)に突発的な勤務が発生した者への実施義務がないことはいうまでもありません。所定労働時間は深夜時間帯にかからない労働者であっても、過去6ヵ月間に24回以上の深夜労働があった場合は6ヵ月に1回の健康診断を行わなければならないとされています。

③健康診断個人票の管理の仕方
健康診断の結果について、事業者は記録するとともに、労働者本人に通知しなければなりません。事業者の記録は「健康診断個人票」という書式を使って作成し、5年間保存する義務があります。しかし、保存場所の指定までは特に法律で定められてはいません。事業場ごと(貴社の場合は店舗ごと)に保存してもかまいませんし、本社で一括して保存してもかまいません。大事なことは、「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」(平成20年1月31日公示7号)にあるように、健康診断結果に基づき必要に応じて二次健診の実施、医師からの意見聴取、就業上の配慮などの健康管理を行えるようにすることです。

管理監督者問題


管理監督者に該当する者の基準については、「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある」「出社や退社や勤務時間について厳格な制限を受けていない」などが通達で示されており、多店舗展開する小売業や飲食業の店長などは該当しないという扱いが裁判・通達で明確となっています。 管理監督者に該当しないとするならば、店長手当や役職手当などの手当も残業代計算の基礎に含まれることとなり、高額の残業代が発生することが予想されます。もしこれらの手当を残したままとするなら、これらの手当を固定残業代(またはその一部)とするという制度を就業規則等で定めなければなりません。その際、①固定残業代として支給する額が何時間分の残業代であるかを明示すること、②実際の残業時間が①の残業相当時間を超えた場合には差額を支給することが条件です。

時言 労使トラブル 年金相談

ハラスメント



ACCESS

〒169-0075
東京都新宿区高田馬場2-14-2
新陽ビル507号室
TEL 03-6280-3925
>>お問い合わせフォーム
>>詳しいアクセス情報

ページTOPへ