労使トラブル110番

歩合給に対する割増賃金と「手待時間」の評価


Q
引っ越しを専門とする会社です。引っ越し作業というのは、「手待時間」(お客さんの都合で予定どおり荷物が整理されていないため待っている時間など)が多く、それをどう評価するかで悩んでいます。単純に労働時間としてカウントできないため、運ぶ荷物の量や運行するトラックのトン数などによってポイントを定めた歩合給制度をとっているのですが、労働基準監督署から残業代未払いだと是正勧告を受けてしまいました。
A

「手待時間」は労働時間


厚生労働省が平成29年1月20日に出した「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では、「労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間」のことをいい、「労働時間に該当するか否かは、労働契約や就業規則などの定めによって決められるものではなく、客観的に見て、労働者の行為が使用者から義務づけられたものといえるか否か等によって判断されます」としています。そして、労働時間に該当する例として、以下の点を列挙しています。これは以前の通達にはなかった新しい指摘です。

①着替え時間等の「業務に必要な準備行為」や清掃等の「業務に関連した後始末」
②「労働から離れることが保障されていない状態で待機等している時間(「手待時間」)
③「業務上義務付けられている研修・教育訓練の受講」や「業務に必要な学習等を行っていた時間」


もちろん実態が「労働者が自由に利用できる時間」であれば、それは「手待時間」ではなく休憩時間とみなされます。「手待時間」か「手あき時間(休憩時間)」か、よく実態を判断して対応してください。

歩合給にも割増賃金が発生する


よく出来高払制(歩合給)には残業代が発生しないという誤解がありますが、労働基準法施行規則では、出来高払制や請負制によって定められた賃金にも割増賃金が発生すること、その計算の基礎となる賃金の計算式が明示されています。

【歩合給総額】÷【その賃金算定期間における総労働時間数】
※通常の給与制度と歩合給制度の両方ある場合の割増賃金は、それぞれ算定した金額の総額となります。
※掛ける乗率は「1.25」ではなく「0.25」となります(100%の部分はすでに歩合給の中に含まれているため)。


例えば、基本給20万円、歩合給10万円で、所定労働時間が170時間、残業時間が30時間だったと仮定しますと、
○通常の賃金に対する残業代=20万円÷170時間×1.25×30時間=58,824円
○歩合給に対する残業代=10万円÷200時間×0.25×30時間=3,750円
○合計=62,574円が残業代となります。
なお、歩合給の中に残業代が含まれているとする場合には、通常の労働時間の賃金と割増賃金の区別がつかなければなりません。つまり、歩合給の中に何時間分の残業代が含まれているのかを明確にし、かつ、その歩合給の中に含まれている割増賃金相当額を超過した場合は、別途その差額を支給するようにしなければなりません。

就業規則でどう規定するか


以上の点を就業規則で規定する場合の例を紹介します。

(歩合給)
第●条 歩合給は、一賃金計算期間における運送料など一定の成果に応じて支払うものとし、一賃金計算期間において●●時間分の時間外勤務見合いの手当として支給する。
2 一賃金計算期間において時間外勤務が●●時間を超過した場合は、次の計算式により別途、差額の時間外勤務手当を支給する。
歩合給部分の賃金額÷総労働時間×0.25×●●時間を超過した時間外勤務時間


労働基準監督署が歩合給制度に関して残業代未払いがあると指摘するケースは、①歩合給部分に対する割増賃金が全く未払いとなっている場合と、②支払っていると会社が主張してもそれが通常の賃金と区別されていない場合とがあります。
こうした誤解を招かないためにも、規程をきちんと整備して対応した方がいいでしょう。

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