労使トラブル110番

無期雇用転換制度への対応の遅れが様々な矛盾を生み出す


Q
弊社は正職員については60歳定年、定年後65歳まで有期雇用による継続雇用制度としていますがパート(有期雇用)については契約更新の年齢上限を60歳としています。
正社員の60歳定年後の働き方は、就労日数・就労時間・賃金とも60歳前よりも少なくなっています。
労働組合から「パート職員も65歳までの雇用を保障すべきだ」という要求が出されていますが、どのように対応したらよいでしょうか。


A

高年齢者雇用安定法と有期パートの更新上限


平成18年4月に高年齢者雇用安定法が改正され、定年の定めをしている事業所は、65歳までの安定した雇用を確保するため、
①65歳までの定年の引き上げ、
②定年後の継続雇用制度の導入、
③定年の定めの廃止
のいずれかの措置を講じなければならないとされました。
その結果、大半の企業では65歳までの継続雇用制度を導入しています。

パート労働者については半年なり1年単位の有期雇用としている企業が大半です。
本来、有期雇用とは、定めた契約期限の到来とともに雇用が終了するのが原則ですから、そもそも定年という考え方はなじみません。
ですから高年齢者雇用安定法が有期雇用に直接適用されるわけではなく、例えば「契約更新の上限を60歳とする」と就業規則で定めをしたとしてもそれがにわかに違法となるわけではありません。
 
ところが実際は、有期雇用のパート労働者は契約更新を繰り返し、5年10年と雇用が継続している例が少なくありません。
こうした場合、形式的には有期雇用ですが実質的に期間の定めのない雇用(無期雇用)とみなされ、雇止めは事実上の解雇とみなされてしまいます。
また、パート労働法では、パート労働者と通常の労働者の労働条件の相違は「不合理と認められるものであってはならない」(第8条)、「差別的取り扱いをしてはならない」(第9条)としており、パート労働者や労働組合からは、「なぜ正職員は65歳まで雇用が保障されているのに、パートは1年単位の契約(あるいは60歳で契約は終わり)なのか?」という疑問が出てこざるを得ないのです。

そうしますと、無用なトラブルを生み出さないためには、パート労働者の契約更新の年齢上限も65歳まで引き上げた方がいいと思われます。

平成30年4月以降、無期雇用パートが生まれる


一方、労働契約法第18条は、平成25年4月以降の有期雇用契約が更新され「通算した期間が5年を超える」ときは、労働者に無期雇用への転換申し込み権が発生し、労働者がその申し込みを行えば、使用者の意思にかかわらず法律上当然に無期雇用となるとしています。
この条文が効力を持ち始めるのは平成30年4月以降ですから、そう遠くない時期なのです。

現行のパート就業規則をみると、この無期雇用に転換した後のパート労働者の扱いに関する規定が存在しない場合が多いのが実際です。
このままだと、例えば無期雇用に転換した後のパート労働者をいつまで雇わなければならないのかが曖昧になりますから、労働者が希望するまま(極端にいえば死ぬまで)雇い続けなければならなくなります。

無期雇用パートに関する規定のポイント


では無期雇用に転換したパート労働者に関する就業規則の規定をつくる場合、どういうポイントに気を付けなければならないか列挙しておきます。

1.まずどの就業規則に定めるのかを決めます。具体的には、現在のパート就業規則に、新たな条文として無期雇用パートに関する規定を置くのか、それとも無期雇用パートを対象とした新たな就業規則を作るのかを決めるということです。それは有期雇用パートと無期雇用パートの役割、労働条件の違い等を判断基準にして決めることになろうかと思います。

2.定年の定めを規定します。定年の定め方は、60歳定年でその後継続雇用とする場合と、65歳定年とする場合とがありますのでいずれを選択するのかを判断する必要があります。

3.「60歳定年その後継続雇用」とする場合、正職員の継続雇用制度と同じ扱いとするときはその旨を定め、正職員と異なる継続雇用制度とするときはパート用の継続雇用制度の定めを別途つくらなければなりません。


2種類のパート労働者が生まれてくることをいまから想定し、どういう位置付けでどういう労働条件で働いてもらうのかをよく議論し、それに合わせた就業規則の改定作業が求められています。
 

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