労使トラブル110番

ノロウイルス、季節性インフルエンザと就業制限


Q
飲食業を営んでいます。
仕出弁当の大量注文に対応するためのアルバイト募集の中で、ノロウイルス感染者が一定数いました。
採用を断りたいと考えているのですがかまわないでしょうか。
また、従業員の中に季節性インフルエンザに罹患している者が目立ち始めましたが就業制限できますか。


A

伝染性の疾病に対する就業制限


伝染性の疾病に対する就業制限については、労働安全衛生法第68条及び感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症予防法)第18条に定められています。
但し、「伝染病予防法(現在の感染症法)の予防措置が適用されるため、安全衛生法68条の対象ではない」(昭和33.2.13基発第90号)とする行政解釈があり、
したがって専ら感染症法に基づく対応となります。

今日のグローバル社会のもとでは感染症への迅速、的確な対応が求められるため、かつての伝染病予防法、性病予防法、結核予防法などが1997年に感染症予防法に統合されました。
この法律では、すべての感染性のある疾病を5つに分類(危険度の高い順に一類から五類)し、
それとは別に「新型インフルエンザ」「指定感染症」「新感染症」を設けそれぞれの対応も定めています。
最近の例では、平成25年、鳥インフルエンザ(H7N9)を指定感染症として定める政令が施行されたのが記憶に新しいところでしょう。

感染症法による就業制限については、
一類感染症については「入院(隔離)」、
二類は「必要に応じて入院」、
三類は「特定業務への就業制限」、
新型インフルエンザ等は「必要に応じて入院」、
指定感染症及び新感染症については「政令で指定」と大きく分類されています。


ノロウイルス、季節性インフルエンザの扱い


ノロウイルスによる感染性胃腸炎は感染症法上第五分類とされており、就業制限の対象とはなっていません。
一定期間について手洗いや下痢・おう吐等への適切な対応を行うという扱いです。
ですから一般的にはノロウイルス罹患者を休業させたときは休業手当の支払義務があります。

 しかし、厚生労働省の「大量調理施設衛生管理マニュアル」(最終改正:平成25年2月1日付食安発0201第2号)では、
「調理従事者等は…ノロウイルスを保有していないことが確認されるまでの間、食品に直接触れる調理作業を控える」としており、
ご質問の例では陰性が確認されるまでは採用を控えるようにした方がいいでしょう。

季節性インフルエンザも五類感染症に分類されており就業制限の対象とはなっておりません。


就業規則で就業制限を規定できるか


一方、使用者としては他の従業員に対する健康配慮義務や感染拡大防止という観点から、
ノロウイルスや季節性インフルエンザ罹患者が出勤すれば、他の従業員や顧客に感染し迷惑を与えることを心配するのは当然です。

就業規則の就業禁止規定に、「医師の診断を命じることができる」「感染者の就業を拒否できる」などの条項を入れること自身は構いません。

しかし、こうした規定があったとしても、労働基準法第26条に定める休業手当(平均賃金の6割以上)を支払う義務があります。

休業手当支払い義務を免れるのは、
①労働者が自主的に休みを申し出た場合
②感染症法に基づく就業制限や同法に基づく都道府県知事の外出の自粛等の協力要請があった場合、
③従業員が伝播確認地域から帰国した後に自宅待機させ、休業を命じる場合 などに限られます。


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