年金相談の現場から

遺族厚生年金は短期要件請求と長期要件請求のどっちが得か?



Q
先日夫がガンで亡くなりました。障害年金の請求を開始しようと思って手続をしているさなかに急死してしまいました。52歳でした。
葬儀屋さんからいただいた書類を読んでいると、遺族年金のことが書かれており、年金事務所に相談に行ったところ「短期要件の請求の方が得ですよ」と言われました。
なぜそうなるのかよくわかりません。

夫の年金加入歴は、厚生年金加入期間239ヵ月、国民年金の保険料納付期間34ヵ月、全額免除期間61ヵ月です。



A

【遺族厚生年金の受給要件】


遺族厚生年金をもらえる人は、遺族であること(配偶者・子、父母、孫、祖父母)とともに、死亡した者が以下の要件のいずれかに該当していなければなりません。

① 厚生年金の被保険者の死亡
② 厚生年金の被保険者であった間(在職中)に初診日がある傷病により、初診日より5年以内に死亡
③ 障害厚生年金の1級または2級の受給権者が死亡
④ 老齢厚生年金の受給権者または老齢厚生年金の受給資格期間を満たしている者の死亡(いずれも25年以上の受給資格期間を満たしていること)

夫は、在職中か(①の要件)、在職中に初診日があり5年以内に死亡(②の要件)のいずれかに該当しているということでしょうか。
かりに、①の要件にも、②の要件にも該当していなかったとしても、年金加入歴からすると、厚生年金加入期間と国民年金保険料納付済期間、免除期間を合計すると334ヵ月になりますから④の要件(受給資格期間を満たしている者が死亡)には該当することになりますから、遺族厚生年金を請求することができます。


【短期要件と長期要件とは?】


上記①②③の要件を短期要件といい、④の要件を長期要件といいます。

短期要件のうち、①②に該当する場合は、保険料納付要件もあわせて満たしている必要があります。
保険料の納付要件とは、「死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間と保険料免除期間を合わせた期間が3分の2以上ある」か、「死亡日の属する月の前々月までの1年間に保険料滞納期間がない」か、いずれかの条件を満たすことです。

ちなみに、長期要件の場合は、すでに一定の納付実績が認められることから保険料納付要件は問われません。

遺族厚生年金を請求する際、請求用紙に、短期要件で請求するか、長期要件で請求するかを選択する欄(15欄)があります。
選択の仕方は、短期要件か長期要件かいずれかを選択するにチェックを入れるか、または「年金額が高い方の計算方法での決定を希望する」の欄にチェックを入れるかという方式です。
かりに選択の申出をしなければ、短期要件として自動的に計算されてしまいます。


【どちらの金額が高いか】


遺族厚生年金は、死亡した者の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3の相当額ですが、同時に配偶者が妻である場合は、中高齢寡婦加算という制度もあります。短期要件と長期要件とでは計算方法が違いますし、あなたのように短期要件と長期要件のいずれにも該当するケースでは判断が難しくなります。そこで考え方を整理しておきます。

(1)報酬比例額の計算方法の違い
短期要件は、厚生年金加入期間が300月に満たない場合には300月として計算します。一方、長期要件は短期要件のような300月みなしはなく、実際の被保険者期間で計算します。

(2)中高齢寡婦加算の要件と金額
中高齢寡婦加算とは、夫の死亡当時、40歳以上65歳未満であって、遺族基礎年金を受けることができなかった妻(または遺族基礎年金をもらっていたが子がすでに18歳を過ぎたためもらえなくなった妻)を対象として支給されます。金額は年5851,000円です(平成31年度価格)。
ただし、上記④の長期要件での請求の場合、死亡した夫の厚生年金の被保険者期間が240月以上なければ中高齢寡婦加算が支給されません。


【年金事務所に計算してもらうのが一番確実です】


以上から、あなたの場合、夫の厚生年金被保険者期間が239ヵ月ですから、長期要件で請求すると中高齢寡婦加算が支給されません。
また、短期要件による300ヵ月みなしで報酬比例額を計算した方が高い金額で計算されると思われます。

念のため、年金事務所で計算してもらうか、請求用紙の記入欄に、「年金額が高い方の計算方法での決定を希望する」欄をチェックするのがよいでしょう。

※上記は、2019年10月時点の回答です。

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