時言
ダブルワークで自殺したケースで初の労災認定
1.岐阜大学の研究員として働きながら、測量などを行う会社で働いていた60歳の男性が自殺した。大学で上司の厳しい指導を受ける一方、測量会社では技術者として半年余りの間に74カ所の橋りょうを点検する事業のデータ処理からとりまとめまで1人で行い、すべての責任を負う立場にあったという。こうした状況から名古屋北労働基準監督署は、2つの職場でのストレスが原因でうつ病を発症していたものと判断し、ことし4月、労災と認めました。
2.労災認定をめぐっては、2020年9月施行の改正労災保険法で、複数の職場で受けたストレスを総合的に検討し、(たとえ単一の職場では労災と認定できなくとも)労災対象になるかを判断する新制度が導入された。政府は、本業と副業の労働時間を合算して残業時間を計算し、パワハラなどによる心理的ストレスも各職場の状況を総合的に考慮するという考え方だ。法改正前は一つの職場ごとに検討していたことと比べると、より実態に合った方針と言える。
3.一方、厚生労働省の研究会は12月、企業側が副業や兼業をする人に割増賃金を支払うため行う通算の労働時間の管理を廃止する案を示した。たしかに、企業からすると労働時間を管理する負担は大きい。しかし、改正労災保険法とは相矛盾する方針ともいえる。政府は労働力不測の中で副業・兼業をしきりに呼びかけるが、これでは今回の労災事故と似たような事件が相次ぐリスクがあるのではないだろうか。
2024年12月