時言
中小企業の賃上げに対する直接補助はできないのか
1.6月の実質賃金が27カ月ぶりにプラスとなった。しかしこれはボーナスなどの一時金が上振れした結果という一時的なものとみられている。政府は8月から3か月間限定的に電気・ガス補助金を復活させる。その結果、また一時的に実質賃金プラスはあるかもしれないが、不安定であることは確かだ。
2.国民の消費動向はマイナス基調から抜け出せず、小売業や飲食店の経営を圧迫している。海外からの日本旅行とインバウンド消費は堅調なようだが、日本人は国内にも旅行しなくなっている。旅行業とて不安定経営は免れない。
3.ある建設会社の社長から、「無理して給与アップして経営が厳しくなっている同業者が増えている」という話を聞いた。商工会議所の調査によれば、2024年度に所定内賃金の引上げを実施した企業のうち、「業績が改善しているため賃上げを実施=前向きな賃上げ」企業は36.5%、「業績の改善が認められないが賃上げを実施=防衛的な賃上げ」は63.5%だという。もちろん人手不足が理由である。
4.こうなると雇用の大半を占める中小企業の賃上げに対する政府の施策が問われる。自治体によっては、賃上げ実施企業に対する補助金支給を開始しているところも生まれている。直近では雇調金助成の経験もあるわけだし、減税や社会保険料負担への援助などやれることは一杯あるはずだ。
2024年10月