時言
『中小企業白書・小規模企業白書』を読む
1.新聞報道を見ていると専ら大企業の売上高・利益率が紹介され、あたかも日本経済は前進途上にあるかのように錯覚する。それでも直近の2024年1-3月期の統計では、実質GDPが-0.5%(年率で-2.0%)、4期連続でマイナスというから深刻である。
2.中小企業庁が5月に発表した『中小企業白書・小規模企業白書』によれば、中小企業が抱える経営課題は、①売上不振(販路開拓・マーケティング)、②原材料高、③求人難の割合が高いという。大企業の売上高・利益率が増加する一方で、中小企業は発注側の売上原価低減が強要されている。
3.人手不足問題では、いままで中小・小規模企業は女性と高齢者の雇用で何とか乗り切ってきたが、それも限界に達している。労働時間の上限規制の強化とも相まって必然的に投入できる労働力は抑制せざるを得ない。賃上げの原資となる業績改善が見られない中でも、賃上げせざるを得ない企業が増えている。
4.参考事例として紹介されている京都の精密機械の開発、製造を行う会社では、「家庭が一番、仕事はその次!」という理念を掲げ、従業員数が10年間で3倍化(現在283名)、過去3年間の新卒定着率76%という水準だという。参考にしたい例である。
2024年5月