時言
「満額回答」の連発に思う
1.今春闘で大手企業による「満額回答」が連発されている。大規模に賃上げされ、物価上昇を上回る賃金水準となればいいことだと思う。しかし、ここまで「満額回答」が連発されると、「いままで何やっていたの?」と思ってしまう。「満額回答」できるほど大手企業には経営に余裕があり、労働組合はその余裕ある経営状況の範囲内でしか要求していないんじゃない、出来レースじゃないか?と思ってしまう。
2.「最近海外旅行した人からストに遭遇したという話をよく聞く」(JILPT)そうだ。それほど海外ではストが多いことは確かなようだ。アメリカでは自動車労組がビッグ3相手に、ハリウッドの脚本家や俳優もストを行っている。自動車労組のストでは結局4年間で25%の賃上げや物価に連動して賃金アップするシステムの導入などを合意した。組合の組織率は10%ちょっとしかないというが、やはりストライキの影響力は大きい。
3.日本ではめっきりストライキはなくなった。昨年の西武百貨店のスト、今年に入ってもわずかアマゾンのフリーランスのスト、医療労働者のストが少し話題になったぐらいだ。そうこうしているうちに日本だけ賃金の上がらない国になってしまった。日銀は賃上げ率が5%を超えたことをもってマイナス金利を解除する方向に踏み切ったが、果たして来年以降も「満額回答」は持続するのだろうか。はなはだ疑問である。
4.労働者の多数を占める中小企業には5%を超える賃上げの余力はない。政府は価格交渉で大企業が圧力をかけないように要請すると言っているが、保証の限りではない。さらに、中小企業にとって最も重い負担になっているのが社会保険料で、その軽減策はいまだ議論にすらなっていない。
2024年3月