時言

絶対的人手不足時代の覚悟


1.30年以上にわたって賃金が伸び悩んできた日本がいま転機を迎えている。今春の賃上げを踏まえても日本の賃金水準はG7の中で引き続き最下位である。日本人の人手不足を補う頼りの外国人からも、日本は見放されつつある。一方、最低賃金は上がり続け、賃上げ圧力が中小企業にも押し寄せる。

2.コロナ禍の3年間は本質を見えなくさせてきたが、コロナ後、飲食店も建設業も、医療介護業界も圧倒的に人手不足は解消できていない。リクルートワークス研究所は、経済成長がほとんどない場合、2040年には約1100万人の労働力が不足すると予測した。あらゆる産業で人手不足が到来し、働き手優位の状況は賃金圧力をますます強めている。

3.働き手が企業を選択する時代は、単純に賃上げだけで解決するわけでもない。「時給2000円のバイト募集をしている宿泊施設がある。…それでも働き手が来ない」(日経新聞5月16日付)。会社を選ぶ理由も、会社を辞める理由も共通している。賃金はもちろんだが、福利厚生の充実、勤務時間や休日など働きやすい職場を選び始めている。労働者が学校教員や国家公務員の職場を選ばなくなった理由はそこにある。

4.もちろん根本的には国の施策が問われなければならない。少子化対策が急がれるゆえんである。同時に、企業としても、絶対的人手不足時代に対する覚悟が問われているのである。






2023年5月

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