時言
異次元の少子化対策とは
1.少子化は政府の予想を超えたテンポで進み、その結果は、社会保障の基盤を崩し、企業経営における人出不足の解決の見通しが見えない状況を作り出している。国の持っている資源のかなりの部分を少子化対策に向けなければ日本の未来は暗い。政府が「異次元」と言わざるを得ない所以である。
2.最近政府が打ち出した「異次元」施策は、育児休業制度の拡充(男性の育休期間中の賃金保障など)と児童手当の拡充(但し、所得制限あり)である。
3.子どもはとにかくお金がかかる。成長期にあるため服も靴もどんどん合わなくなって絶えず新調しなければならない。なによりも教育費の負担が日本は世界最大級である。最近政府が発表した「令和2年度 人口動態職業・産業別統計」で興味深いのは、「第1子について、出生時に母が有職である割合は62.9%で、前回(平成27年度)の45.8%から17.1ポイント上昇」「(婚姻は)夫婦とも有職の割合は80.1%で、前回の73.8%から6.3%ポイント上昇」という数字である。かつての夫が働き、妻が専業主婦なりパートという政府の描いていたモデルでは、婚姻も出生もほぼ考えられない状況である。
4.たしかに育児休業制度の拡充などは必要である。しかし、より根本的には、女性の5割以上が非正規雇用という雇用のあり方にメスを入れること、異常な教育費負担問題をどう解決していくのか、そして家庭が子育ての責任を持つという考え方から、社会が責任を持つという考え方へのシフト転換がなければ少子化問題は解決できない。
2023年3月