時言
原発事故被害訴訟で最高裁がスルーしたこと
17日の原発事故被害の集団訴訟(4訴訟)の最高裁判決は、国の責任を否定した。津波の予見可能性は「判断せず」、仮に「予見した津波に基づいて対策しても、実際に来た津波による電源喪失は防げなかった」とした。
マスコミ各紙も、「『津波予見性』踏み込まず」「原発事故『防げず』」(読売)、「対策命じても『防げず』」(朝日)とほぼ同じ報道をした。国策として原発を推進してきた国が、東日本大震災で重大事故が起きたにもかかわらず、安全のための規制、そのための権限を国は行使すべきだったのかという一番問われた点を最高裁はスルーしたのである。
この最高裁判決は、今後の同様の訴訟の判決の方向を決定づけることになろう。唯一の救いは4人の裁判官のうちの一人(三浦守裁判官)が意味のある反対意見を述べたことだ。判決文の半分からはこの反対意見が展開されている。
よく考えてみれば、この最高裁判決の論理は、第二次大戦時、さらには現在のロシアのウクライナ侵略において取った政府やロシアおよび軍部の論理と同じである。戦争の原因も被害の拡大も、決して自然現象ではなく、因果関係があるのであり、「防げなかった」では片づけられないはずである。
2022年6月