時言
実質的失業率はいくらか?
1.政府の発表では9月の失業率2.8%。しかし、実感とはずいぶん食い違っている。野村総研は実質的失業率11%という見解を出した。なぜこうも違った数字が出てくるのか。そこには日本の失業率の出し方の問題がある。「仕事がない」だけが基準ではなく、「(ハローワークなどで)職探しをしている」という基準が付け加わるから、職探しをあきらめた実質的失業者は含まれない。さらに、休業手当をもらっていない「休業者」も含まれない。
2.日本は世界と比べて一見すると失業率が低そうに見える。しかし、各国の基準はバラバラでそう単純ではない。日本のようにハローワークなど特定の職業紹介組織に「失業者登録」した者だけを「失業者」に算入するやり方は他国にはない。また、多くの先進国では「部分的失業」も失業者にカウントしている。
3.総務省の労働力調査によれば、仕事を失った状態が1年以上続いている「長期失業者」が7月~9月平均で66万人に上り、去年の同時期より18万人増えた。「完全失業者」のうち長期失業者の割合は34.6%と新型コロナウイルス以降で最も高い。経済活動が再開する動きがあり企業からの求人は回復する傾向にあるものの、アパレル・繊維製品、飲食業、サービスなどでは厳しい状況が続いていることが背景にある。失業した40~50代の人が、いままでの経験や能力を生かして再就職する道が狭くなっているのである。
4.いまセーフティネットのあり方を真剣に検討しなければならない。日本の失業給付受給期間は最長(会社都合退職で45歳以上)でも1年弱。長期失業者は失業給付が打ち切られてしまう。政府は「小口融資」や「(10万円付き)教育訓練」などを用意しているというが、他国では失業給付支給期間が「上限なし(ベルギー)」、「3年(フランス)」、「24ヵ月(ドイツ)」などはざらで、そのうえ失業給付受給後に失業扶助制度のある国も多い。
2021年11月