時言
アメリカの暴動とコロナ格差
1.アメリカミネソタ州で5月25日に起きた警官による黒人圧殺死事件に端を発して、アメリカ全土で暴動が起きている。このすさまじいエネルギーの背景にあるものは何か? 長年の黒人差別に対する反発だけなのだろうか? アメリカ大統領選で、民主党候補の指名争いの初期、若者たちのエネルギーはサンダース支持の爆発的エネルギーとして現れた。通底するものがあるようだ。
2.アメリカの5月の雇用統計によると、完全失業率は13.3%。1ヵ月で10.3%も完全失業率がアップしたのは戦後かつてない急激な変化だという。しかもその中身を見ると、成人全体の19%は3月中に失業又は労働時間が減少している。失業者の大半は復職の見込が不確定で、低所得者のグループ、とくに黒人ヒスパニック系が最も多い。さらに、若者と女性の失業が増加している。これらの層がまたコロナ感染のリスクに最も晒されている。
3.日本の4月の完全失業率は2.6%で前月比0.1ポイントの上昇にとどまった。しかし、完全失業率とは“失業し、かつ、求職活動をしている者”に限られ、非労働力人口そのものは59ヵ月ぶりに増加し、前年同月比58万人増である。一方、休業者は420万人増の597万人となり、潜在的な失業リスクは高い。
4.コロナ感染は、社会に格差という軋みの広がりをもたらす。格差は、ときに人種であり、性差であり、学歴であり、就労形態であり、貧富である。その広がりは人々にフラストレーションを生じさせ、放置されると負のエネルギーが溜まり、暴動のような激しい現れ方をする。いま雇用をめぐる軋みが生まれ始めていることを見逃してはならない。「日本は民度が高い」(麻生副首相)などとバカなことを言っている場合ではないのである。
2020年6月