時言

「8050問題」と「老後2千万円」報告書


1.40~64歳のひきこもり状態の人が全国に61.3万人と内閣府が推計値を発表した。
ひきこもりの平均年齢を押し上げているのは、いわゆる就職氷河期世代で、ブラック企業で疲弊し、ひきこもりに移行している現実がある。
ひきこもる50前後の中高年の子と、それを生活的に支える80近い高齢の親という家庭が増え、「8050問題」は深刻さを増している。

2.5月28日、19人を死傷させた川崎殺傷事件の容疑者は51歳だった。
6月1日練馬区で起きた元農水事務次官(76歳)が息子(44歳)を殺した事件は、「(ひきこもりの)息子が川崎殺傷事件を起こさないため」だったと報道されている。
この二つの事件に対して、「死ぬなら一人で死ね」という意見、「迷惑をかける前に親として責任をとるのは立派」などの声がある。
これらの声には、ひきこもりを犯罪予備軍とみなして危険視する報道と世論が存在することを示している。
そしてこうした声が強まるほど、家族はますます行政に、周りに支援を求められなくなり追い詰められていく。悪循環である。

3.必死に働いても非正規雇用で報われず、あるいはブラック企業のもとで退職させられ、自分のことは自分で何とかしなくちゃならない、他人になどかまっていられないという雰囲気、そう思っている人が多い。
一方、政府は自己責任論を利用し、あるいはあおったりする。
金融庁の「老後2千万円」報告書も、自己責任で老後を何とかしろというのが根底にある。
生活保護であったり、年金であったり、住宅保障であったり、社会保障のあるべき姿に立ち返らなければ問題は解決しない。




2019年6月

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