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下町ロケットとKYB不正

池井戸潤の作品は中小企業の大企業に対する大逆転劇というパターンが分かり切っているにもかかわらず面白い。
今回の作品はロケットの技術から大地を耕す機械に使われるトランスミッションの開発という世界へ。
そこには大逆転劇という面白さに加え、佃製作所という会社がもつ技術に対する“愛”ともいえる不動の確信、切磋琢磨がある。

翻って現実は建物の免振装置メーカーの最大手KYBの不正問題の発覚である。
現在分かっているだけで2003年から986件で検査データの改ざんが行われていたという。
当事者の合意を得た建物の実名は70件でしかなく、データ改ざんのなかには原発施設もあるという。
かつて刑事事件にまで発展した東洋ゴムの改ざん問題の件数をはるかに上回る不正である。

同社が16日に行った記者会見によれば、
「検査でNGが出れば、分解と調整で5時間はかかる。データを書き換えるよう口頭で引き継がれていた」、
不正の原因は従業員が再検査の手間を省くためだった。

この間ほとんどの自動車メーカーで燃費検査の不正が発覚した。
この国のものづくりの危機は、異常な人減らしと利益第一主義がもたらしている。
しかし1社の利益の追求が日本全体のものづくりの危機をもたらし、最終的にその会社の不利益にもつながることを知るべきである。


2018年10月

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